22
今の自分の状態に慌てていると、白クマの人が私に話し掛けてきた。
「自己紹介まだだったよね?俺はベポ。
隣にいるのがシャチだよ!」
白クマの人、もといベポ……ちゃんが言うとキャスケット帽子を被ったキャスケット…さん?がよろしくと挨拶してきた。
「え、えと……リーシャ……です……」
海兵が海賊に自己紹介なんて考えたらかなり違和感を覚える。
私がポソリと言うとシャチ……さんが口を開いた。
「俺の事はシャチでいーからな!
そんな事より船長が一目惚れした女がいるって聞いた時はマジびっくりしたぜ!!」
「……!、そそそ、それって……」
「リーシャの事だよ!」
私がなかなか言えないでいるとベポちゃんがはっきりと断言した。
「えとっ……」
私はベポちゃんの言葉に顔を赤くする。
「で、でも、あの人って他の人に対してもあんな感じ……なんじゃないですか……?」
あの人を見ていれば誰でもわかるようにトラファルガーさんはあの容姿だしかなりモテるはずだろう。
私の言葉を聞いた二人は目を丸くした後、急に笑い出した。
「あははっ!まァ、普通はそう見えるよなっ!」
ゲラゲラと可笑しそうに笑うキャスケット帽子の人。
「うん……でも、リーシャと初めて会った日のキャプテンのあんな姿は初めて見たよ俺」
真ん丸な黒いつぶらな瞳をくりくりさせながら首を傾げるベポちゃん。
「そ、そうなんですか…」
何があったのだろうか…?
なんだか聞かない方がいいと思い、私は顔を引き攣らせながら相槌をうった。
「ほォ、面白そうな話をしてるじゃねェか」
突然周りの気温が下がった感じがして両側の二人はピシリと固まり、私も肩がビクリと震えた。
私達はゆっくりと声がした方へ振り返る。
そこには不適に笑ったローがいた。
「キャ、キャプテン……!」
シャチさんは冷や汗をかきながら呟いた。
「あ、えと……!俺達まだ用事が残ってたんだった!行こうシャチ!」
「お、おう!そういう事だ!じゃあなリーシャ!」
「またね!」
「えっ、ちょ…」
私の声虚しく、二人はあっという間に走り去った。
私が呆然と二人が走り去った方向を見ていると、いつの間に移動していたのか、トラファルガーさんがベンチに座って私の腰に腕を回す。
「えっ、あのっ……ち、近い、です……!」
トラファルガーさんと私の体のみ、密着度があまりにも近いので私は顔を真っ赤にしながら叫んぶ。
「フフ、気のせいだ」
(絶対気のせいじゃないっ!)
私は心の中で盛大に叫んだ。
するとトラファルガーさんはチラリと私の首より下を見てニヤリと笑った。
「……そそるな」
「な、何がですか……?」
私がそう聞くとトラファルガーさんは私の鎖骨辺りを指を差す。
私もその場所を目で辿ると。
「……!?み、見ないで下さいっ!」
すっかり忘れていたが、私はベンチに座った時に少しでも涼しくなるように制服の胸のボタンを数個外していた。
私は慌ててすべてのボタンを留める。
「いい眺めだったのにな」
「っ!」
私は羞恥心で顔が熱くなる。
「か、からかわないでください…!」
私は目をギュッとつむりながら言った。
「からかってなんかねェよ」
「……え?」
私は目を開けて顔を上げる。
トラファルガーさんの顔を見てもニヒルに笑ったままだった。
「フフ……、仕事無理すんなよ」
トラファルガーさんはそう言った後私の頬をペロリと舐めた。
「ひゃあっ……!」
私は驚きで声が出た。
「ククッ……アイスが付いてたから取っただけだ」
トラファルガーさんは喉の奥でクツクツ笑うと立ち上がり、コツコツと靴を鳴らしながら去って行った。
[ back ] bkm