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トラファルガーさんの言っていることがよくわからなかった。
それが顔に出ていたのか、彼ははまた口を開く。
「なんとなくだが、元気がねェと思ってな」
私はトラファルガーさんの言葉にやっとのことでピンときた。
「心配してもらえることは嬉しいです。けれどこれは私の問題ですから」
おそらくトラファルガーさんは、何か悩んでいると心配してくれたのだろう……。
だが、自分達はただの他人で、海賊と海兵。
そう言うと、トラファルガーさんは何を思ったのか、私の頭に手を乗せてポンポンと軽く頭を叩いた。
その手つきがとても優しく感じ、驚いて固まってしまう。
そのまま、私の頭に手を置いたまま耳元に口を近づる。
「まァ、何に悩んでんのかは知らねェが―」
最後の言葉を聞いた瞬間、相手の肩を押す。
簡単に離れ、後ろを向かずにその場から走り続けた。
しばらく走っていると、海兵達の姿が見えた。
「何やってたんだ!メイス!」
「す、すいません道に迷ってしまって」
我ながらおかしいと感じたがなんとかごまかせた。
「そうか…それはそうと顔が真っ赤だが大丈夫か?」
「え、だっ大丈夫ですっ!」
慌てて手を振る。
本当は大丈夫なんかじゃなかった。
だって、心臓はバクバクと鳴っていて、体中が熱い。
原因はもちろん、トラファルガーさんが最後に私の耳元で言った言葉だ。
その言葉を思い出しながら、海兵達と再び現場へと向かった。
(“何に悩んでんのかは知らねェが……俺はお前の笑った顔の方が好きだ”)
ずっと残り続けてしまった。
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