05
「あ、あの?」
ピアスの人が目を見開いたまま動かなくなってしまったことを不審に思い恐る恐る声を掛けてみる。
するとピアスの人はハッと気がついた顔をした後ニヤリと不適に笑って私に向かって刺青だらけの手を差し出してきた。
「大丈夫か?」
私は一瞬その手と言葉の意味がわからなかったが、頭の中で先程の出来事を思い出し、そういえば私はこの人に助けられたんだと私は慌てて差し出された手を握って立たせてもらった。
「あ、あのっ!助けて戴いてありがとうございました!」
私はペコペコと頭を下げた。
世の中、こんなにも親切で優しい人がいるんだと思いながら顔を上げる。
「っ!…あ、の…」
上げてすぐに視界に入ったのは今にも鼻と鼻がくっつきそうなくらい近くにあるピアスの人の顔だった。
その近さに驚いて後ずさろうとすれば、いつの間にかピアスの人の片腕が私の腰にぐるりと回されていて動けない。
私は何が起きたのかわからなくて再び涙が込み上げてきそうになった時。
「名前は?」
突然そう言われて私はなんとか涙を飲み込んで答える。
「えっと……リーシャ、です」
「リーシャか。トラファルガーだ」
え。
「トラッ、トラファルガー・ロー!?」
驚きに目を見開く。
その名は海兵じゃなくても一度は聞いたことのある有名な億越えのルーキーだったはずだ。
泣いていいですか?
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