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それからあれよあれよと人が居なくなりオークションハウスには気絶した敵と立っている人は数人しか居なかった。
その中の一人、この光景を生み出した人物であるシルバーズ・レイリーが不適に笑う。
冥王だとか聞こえるけれど、ロー達も何故冷や汗を書いているのか分からなくて、相手はそれなりに脅威なのだろうかと思った。

「あ、ローくん――行くの?」

ユースタス・キッドにカチンときたらしいローが立ち上がるのを見て声を掛ける。
外に居る海軍と戦うようなので心配になって視線を下げた。

「何も心配する必要なんてねェ」

優しい声音で言い聞かされて頷くと彼は笑って階段を登る。
残ったシャチ達に少ししたら自分達も後を行くと言うので理解したと答えた。
ルフィもローと競うように出て行ったのを見てから心臓のある部分を手で押さえた。
目の前に居る、手が届きそうな距離に居る事が未だ信じられない。
ふわふわとした心地で彼等を見送るとレイリーと呼ばれている人がこちらを凝視している事に気が付く。
彼とは初対面なので此処まで見られる理由が思い付かない。
戸惑っていると相手はフッと口元を緩めてきた。

「お嬢さん、もしかして君は異世界からやってきたのかな」

「!?」

信じられ無い言葉に目を見開く。
その反応に彼は納得したように頷く。

「やはり……な。異世界の人間を私は以前一度見た事があるんだが……君からはその子のようなこの世界とは違う気配を感じる。懐かしいものだ」

思い出しているのだろうその顔。
否定しなければならない、なのに、否定しても無駄なのではと思えた。

「その人は帰ったんですか」

「嗚呼。ある日、何の前触れもなくただ帰るからお別れだとね」

「そうですか」

力が体から抜ける。

「おい、リーシャ……何言ってんのか訳分かんねーよ」

シャチの声に振り向くとベポ達の戸惑いと驚愕の混ざった表情とぶつかる。

「黙っていて、ごめんなさい」

何か言うでもなく、それだけを告げた。



海軍を三人の船長が散らした後にバーソロミュー何とかという王下七武海の襲撃に遭うも無事に全員が船に戻れた。
その直ぐ後に万が一の時の為にこっそり用意していたリュックを背負う。
これは所謂家出やローと喧嘩をした時、己むを得ない事が起きて船を降りる時に準備していたものである。
船が深海に沈むまでの時間はあまり無いので急いで外へ向かう。
扉を開けようとすると反対側から凄い勢いで開けられた。

「やっぱりか」

「……ロー、くん」

その名を震える声で出した。
彼の顔は怒気を漂わせていた。
もしかしてシャチ達から聞いたのかもしれない。
こんなに早いという事は簡潔にであれ何かを察して此処に来たという事だろう。
彼は扉をゆっくり閉めて鍵をカチリと掛ける。
窓から逃げようにも開けられる型ではないので不可能。
逃げる隙を得る事もなくなってしまいグッと拳を固く握る。

「意味は良く分からないが、お前はシルバーズ・レイリーに異世界の人間だといわれた時に否定しなかったと聞いた。本当か」

「ローくん、私は、その……ローくんを騙すとかは思ってなくて……ごめん。私、船、降りるから。皆とローくんの夢の邪魔は絶対にしないよ?」

小さな頃から夢なのだと語った時の表情を思い出せば邪魔何て無粋な真似はする気など起きない。
必死に伝えてからローを見ると耳に足音が聞こえて腕と肩を掴まれた。

「きゃあ!?」

そこまま真後ろにあるソファへ背中がぶつかる。
痛みはないが押し返す力が働き振動が身体に伝わると上に一人分の重みが掛かった。
慌てて見るとローが今まで向けられたことがないような顔をして一点を見つめていた。

「許さねェ。降りる事も、居なくなる事も……!」

必死さを前面に押し出させている声音に瞠目。

「幼なじみだからといって、私を守ろうとしたり、船に置く義理はないんだよ」

諭すように説得してから笑う。

「ね、だから、退いて欲しいな」

「幼なじみだから、置いてもらってるとお前は本当に思ってんのか?この海は単に加護欲を抱いているだけで連れてける場所じゃねェ」

(ローくん?)

何を言っているのか不明だ。
要点も無い中身に困惑する。

「幼なじみの枠が邪魔だと前から思っていたが、此処まで持ってこられると、見てみぬふりは出来なくなる」

「あの、は、離して?話し合いをしよ?」

「幼なじみはもう止める。もうお前は只の女でおれは只の、男だ……!」

ギリッと腕を握られて唇を奪われた。

「!!?」

された事のない乱暴さに息が止まる。
あらがおうと手足をばたつかせるが更に抑え込まれてしまう。
唇が離れる頃には息も絶え絶えで部屋には息遣いしかない。
ローは息をしている間もなく、服に手をかけてきて、プチッと服のボタンを外した。

「おれは、今までお前を只の幼なじみとは思った事なんて一度もなかった。出て行く事も、おれの前から居なくなる事もさせない」

ローの言葉の意味を噛み砕くと、とても悲しくなった。
引き止められる事がどんなに相手を思っている故のものであっても、こっちには出来ないのだ。

「私がこの世界にいたらダメだって――もう潮時なのかもしれない」

「行かせねェ」

即座に返してくるローに微笑みを返す。
身体が静電気を感じて目を閉じる。

「ローくん、私、行かなきゃ」

「何言ってやがっ」

ローから見て自分は今どうなっているのだろう。
まるで身体がホロホロと崩れていくような感覚を感じて消えかけているのだろうと自分でも感じた。
彼の頬に手を当てると手がジリジリと手が消えかけているのが見えてお別れが近付いているのを感じる。

「行くな!……俺を置いていくつもりか!?」

叫ぶように言われて涙が出ないようにグッと耐える。

「ローくん、ちゃんとご飯食べてちゃんと睡眠を取るようにね。後、皆を心配させちゃ駄目だから。ローくんはもう立派な海賊の船長何だから……ね」

最後の台詞を言うと共に視界が真っ暗になって暗転。
ローもローの匂いもしなくなって目をソッと閉じた。



さようなら、貴方の居た世界



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