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28


時計の事を思い出して急遽前の島まで取りに戻らなければいけなくなったハートの海賊団は船を前の島に進路変更して止むを得ず引き返した。
それにユウカが必死に私のせいでと謝るのも見る事になった。
島に引き返したは良いが、まだ事件から日が浅いので海軍が居る可能性が高いと踏んだローは手配所にも新聞にも顔が載っていない人間を使う事にする。
その中に当然自分も居るのだと思って取りに行く立候補に手を挙げたのだが、却下されてしまう。
何故だと抗議しても危険な目に会うかもしれないと言われてしまい引き下がる他ない。
落ち込みつつも紅茶をユウカと飲んで待つ事にした。
彼女も当然居残りであるので暇だ。
そうやって時間を潰していると何やら外が騒がしい。
窓を覗いてみると私服で時計を取りに行った船員達が海軍に追われていた。
驚いて凝視していると海軍が船員に追い付く前にローが見えてあの能力を発動させる。

「リーシャさん?」

「あ、うん。ローくんが、戦ってるから」

「え?見たいです!戦闘シーン!」

興奮したユウカは椅子から立ち上がって窓を同じく見る。

「わー!生ルーム!生オペオペの実!」

「オペオペの実?」

「はいっ。オペオペの実なんですあの能力!生執刀!凄ーい!」

鼻息荒く解説するユウカに笑いながらローの事を新たに知れた事を嬉しく思った。

(オペオペの実って言うのか)

今まではぐらかされてきたけれど、やっと知る事が出来た。
確かにローは医者だからピッタリだ。
二人で見ていると戦闘が終わったのか港は大混乱な状態。
まるでちぐはぐな光景にユウカは感動していた。
こちらへ戻ってくると船の中へ全員移動して直ぐに船は動き出して水中へと潜る。
こういう所が利点なので暑いのを我慢出来るのだ。
また暑くなるだろうからユウカも残念そうに顔を歪める。

「ヒエヒエの実を食べたいな〜」

二人切りだからか、口調が緩む。

「ヒエヒエ?」

「大将青雉の能力ですよ!クザンさんです。知ってます?」

「新聞で名前だけなら」

「そうですか。あーあ。二年後も居続けたかったなあ」

「二年後?何かあるの?」

ユウカに訪ねると彼女はハッと口を塞ぐ。
そして、目を泳がせる。

「お願い。聞かせて欲しいな」

「トラファルガーさんに、秘密にしてくれるのでしたら………お教えしますけど」

頼むとユウカはオロオロとしながら口をすぼめてボソボソと答える。
それに大きく頷くと彼女は慎重に言葉を選ぶ。

「えっとですね………海賊の心臓を百っ」

と、言い掛けた時にコンコンとノックがされる。
ユウカもリーシャも肩を揺らしてから扉を見た。

「入るぞ」

ローが時計を抱えて現れた。

「なんだ、二人揃って顔が変だぞ」

ローがシレッと言うのでそうかな、と答えて時計を受け取る。

「二人で怪談を話してたんだよ」

「リーシャさん怪談話すの上手いんですよね〜あはは」

二人して変な顔の理由を言い合うとローは程々にしとけよと気にした風もなく部屋を去った。
それに溜息を付いて時計を元々あった位置に置くと席へ座る。

「この話しはもう止めましょうか」

「うん」

本当は止めて欲しくなかったし、聞きたくて仕方なかったが諦めて紅茶をまた入れに立ち上がった。





海軍に追いかけられてから後日、ローの懸賞金が上がった。
どうやら二億になったらしい。
それに興奮したのは本人を置いての船員達とユウカだった。
ユウカは二億の時に立ち会えるなんて、と言っていて生暖かい目で見るとローは煩ェ、と言う。
だが、騒いでいるのはユウカのみではないので聞こえていなかったようだ。
彼等は宴だ宴だと言う。
とうやら上がった原因は先日の島での暴れた事が考えられる。
ユースタス・キッドに悪態を付くローの姿に声を抑えて笑いを零す。
海賊は懸賞金が高くなればなる程ステータスとして箔が付く。
シャボンディに付く前に二億くっきりと言うのは幸先が良いのだとベポも喜んでいた。
ベポにサプライズで何かお菓子でも作って欲しいと頼まれて腕を捲(まく)る事にする。
何を作ろうかと思案しているとユウカがやってきて首を動かして何か作るのか、と聞いてきた。
時々お菓子を作って振る舞っているのだと言えば彼女は嬉しそうにリクエストしたいと申してきたので丁度良いと聞く。

「プリン食べたいです」

分かった、と答えるとユウカも手伝いたいと言ってきたので了承。
あの人数分を作るのには時間が掛かる。
宴が終わる頃かサプライズでお昼の後に振る舞おうかと予定を組み立てているとコックも手伝ってくれると参戦。
もっと早く出来ると嬉しくなりながら材料を混ぜて、かき混ぜる。
ずーっとかき混ぜる作業なのでコックが居ると大助かりだ。
作業中が一段落した頃には宴を始めると船内放送のアナウンスが流れた。
皆、凄く興奮しているのを感じる。
リーシャも楽しくなってきた。
コックもこれから忙しくなると息巻いていて、やりがいがあると笑う。
その心意気に触発されたのか、ユウカも手伝うと言う。

「お前さんはもうヘトヘトだろ。また休んでから手伝ってくれ」

コックの台詞に疲れていないと言うユウカだが、足が過労で震えているのを知らないらしい。
コックと顔を見合わせて彼女を休ませようと部屋に連れて行った。



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