×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

27


ユースタス・キッドを見事、言葉のみで止めたユウカが話しをしている間に人は周りに居なくなり、海軍も駆けつけてきた。
自分達は海賊なので目立つと困ると判断したリーシャは此処から逃げようと彼女を催促する。
その際、ユースタス・キッドが「またな」と意味深な言葉をユウカに投げつけた。
ユウカはそれに笑うと二人で走る。
ショッピングモール街を通ってハートの海賊船へと向かう。
船を動かしたらしく元あった場所に船はなかった。
海軍が見つければ攻撃してくるだろうから仕方ない。

「リーシャちゃん、こっちこっち」

名前を呼ばれて建物の方を見てみると私服のバンダナが居た。
ここで待っていてくれたのだろうと思うと笑みが浮かぶ。
ローは顔が割れているから海軍に見つかりやすい。
対する賞金首ではない船員達は自由に出歩けるし、ハートの船員だとバレ難いのでこうして待てる。
傍に来たバンダナは行こうかと言って船まで案内してくれた。
こうして頼りになる仲間がとても頼もしく思える。
置いて行かれなかった安堵を感じなから船に戻るとローが怒った様子で仁王立ちしていた。
また何かに巻き込まれた系のリーシャは彼に怒られるのだろうな、と苦笑する。
しかし、怒りの矛先はユウカだった。

「厄介事に自ら首を突っ込んでいったと報告が来た。本当か?」

ユースタス・キッドに言葉を投げつけた件がもう伝わっている事に驚いた。
恐らく近くに海軍の動きを知る為に船員を動かしていたのだろう。

「そ、それは」

「お前はあくまでまだ捕虜の疑いがかかっている。その期間でおれ達の身を危うくした。どういう意味か分かってるな?」

「う、うう」

ユウカの目から涙が零れる。
今回はどう見ても突っ込んで言ったのはユウカで自らを危険に犯したのを近くで見ていた。
だから、庇う言い訳が思い付けなくて胸に手を当てて握る。
ユースタス・キッドに攻撃されず無傷だったのは作品の知識によるお陰かもしれないが、今回は運が良かったのだ。
下手をして知識と人間性が違っていたら今頃こうやって泣けもせずに大怪我をしていたかもしれない。
その可能性を考えれば、今泣いている事は奇跡だろう。
リーシャは見守ろうと決めてローを見た。

「泣いて済むと思ってるなら今すぐこの船を降りろ」

「!、それは嫌です!ま、まだ私っ」

泣きながら叫ぶユウカにローは知った事かと弾く。
それにユウカは唇を噛む。

「お前はまだこの世界を紙の中だと思ってる節がある。その認識が今日みてェな事態を引き起こす」

「あ、改めますから!どうか、乗せて下さい!お願いします」

頭を下げてローに許しを乞う。
まだこの世界を見ていたいのだと分かった。
この世界はユウカとリーシャにとってはまたとない夢のような世界だ。
少しでも世界を見たいと欲が出る。
リーシャもこの世界に居る限り色んなものを見たいと思っているから彼女の気持ちは分かった。

「私、シャボンディ諸島まで行けないみたいなんです!だから、時間がもう、無くて」

「!」

ピクッと耳がその言葉を拾うとユウカの顔を見る。
どういう意味だろう。
時間がない、と言う言葉に疑問が湧く。
ロー達も同じ事を思って問いかけるとユウカは言いようのない予感がする、と述べた。

「帰省本能。鳥科とかでそんな言葉があるんですけど、身体が元の世界に戻ろうと疼いてるみたいで」

そんな感覚に成った事のないリーシャは辛うじて言葉を噛み砕いて理解しようとする。

「帰る感覚を感じてるって事か?」

ベポが首を傾げて問うと彼女は頷いた。

「それまでにお前は帰るって意味だな?」

ローが聞くとユウカは「初めての感覚なので実際に起こらないとどうとも言えないです」と困り顔で呟く。
己の体験からもこの世界へ来た時は何の予兆もなかったので納得出来た。
感覚だけでは分からないだろう。
少女の困惑が透けて見えるらしいローは少し黙り込んだ後に「それまで仕方ねェから面倒を見てやる。次に面倒を起こしたら次はねーぞ」と忠告する。
その了承と船に乗船する事を許可かれたと数秒後に気付くユウカは涙目でありがとうございます、と頭をまた下げた。
それに船員達も気が緩んだのか「良かったな」と声を掛けて歓迎の意を示す。
わいわいとやっているとリーシャは何かを忘れている事を思い出しかけた。

(何だったかな?)

凄く重要ではないが、無いと困る事のような。
部屋を取り敢えず見回して忘れた事のヒントにならないかと目を動かす。
そして、やはり何か足りないと首を傾げて唸る。

「あ!」

「どうした」

声を上げると騒いでいた声が止む。

「時計、前の島に置いていったままだ……」

「「「あ」」」



prev | next