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グランドラインはそういう所だと分かっているのでつい唸ってしまう。
結局自身が異世界から来たから岩が開いたのかは不明のままだ。

「でも、なぁ………やっぱり何か………」

「んなことよりももっと確かめなきゃいけねェ事があんだろ」

「え?何?」

「野郎にコキ使われた話だ」

「別に乱暴とかされてないよ?それに、歌っただけだし」

「だがお前は倒れた、現に」

「疲れが溜まってただけたよ……それに、今回は私が勝手に行動しちゃったのが原因だし……本当に迷惑ばっかりかけちゃってるね私……ごめんね」

俯き加減で謝れば視界にローの手首が見えて顔を上げさせられる。
頬を挟まれた状態でローを見遣ると彼は怒ったような困ったような様々な感情が入り交じった顔でリーシャを真っ直ぐ見ていた。
その目に吸い込まれるような錯覚を感じているとローが口を開く。

「謝るな、お前は何も悪くない。拐われるのも全部やった奴が悪いんだ。お前が気にする事じゃない………お前が無事なら気に病む必要はない」

「ローくん………」

その心に染み渡る言葉に感激と安堵と帰って来れた喜びを噛み締める。
見詰め合っているとゆっくりと心なしかローの顔が近づいてきた。
最初は目の錯覚かと思ったが彼の輪郭が少しぼやけた辺りで本当に近付いていることを知る。
まだ、寝ぼけた頭なのかはよく自分でも分からないが避けようとか、嫌だという気持ちは何故か全くなかった。
これから何が起こるのか自分は本当に理解しているのかと自問自答する前に船長室である部屋の扉がトントンと音を奏でる。
そこでリーシャは意識がハッと我に帰るとローは何もなかったかのように顔を近付けるのを止めてそっと離れた。








次の島へと停泊している時のとある出来事。
いつものようにローはリーシャを降ろしてくれて、安心を感じつつ町を歩く。
そうして外を眺めていると鬼のお面のようなものを付けた人がちらほら居て疑問で頭がいっぱいになった。
皆も気になっているのか興味深そうに見ては何なんだ、あれは、と物議を醸している。
リーシャはそんな中であるイベントを頭に思い浮かべていた。
この町中には鬼のお面ともう一つ『大豆』がよく目につく。
となると、思い出すのは…………。

(この世界にもこんな文化があるんだ)

嬉しくも不思議に思い、懐かしい光景に胸が高鳴る。

「なァ、この町の雰囲気は一体何なんだ?」

近くにいた叔父さんにシャチがついに聞くと、丁寧に笑って「セツブンの日だよ」と教えてくれた。
船員達は揃って口に出しては首を傾げていて、男性はまたまた丁寧にセツブンの日についての詳しい内容を言う。
鬼は外、福は内という掛け声で家の中で豆を蒔いて鬼の仮面を被る人にも豆をぶつける清めの行事。
それを聞いた彼等はストレス発散かとかなり間違った理解の仕方をしていたので海賊だからしきたり事態は何でもありなんだな、と微笑ましく思った。
ローも聞いていたからシャチ達が俺等もやりましょうと提案してきた時に片付けはちゃんとしろよと珍しくゴーサインを出した。
もしかしたらローも実はやりたいんじゃないかという思考に思わずローの顔を見る。
すると彼は何でそんなに笑いながらこっちを見るんだと聞いてくるけれど、別にとはぐらかす。
それが真実か違うかは帰って豆まきをするローを見れば分かるだろう。

「豆まきかぁ……そういえばやったことないかも………」

「豆まきの事を知ってるのか」

ローに聞かれて咄嗟に説明しようとしたが、そういえば自身が記憶がない状態のままだったことを思い出して脳内で言ってはいけないと判断し、苦笑してそんな気がするの、と誤魔化す。
もう、嘘を付くのに慣れてしまった事に凄く落ち込んだ。
最後に歳の数だけ食べるのだとおじさんから聞き終えた男達はローからの許可を得たのを境に大豆をたくさん購入した。
掃除するのが大変そうだと思えば隣のローが掃除は全員参加だと付け足していたので内心これで苦労せずに済みそうだと安堵。
彼等は嬉しそうに了解を口に出すと鬼のお面も購入していた。
一人だけかと思えば何人かでローテーションしながら豆まきをするらしい。
これなら平等に豆を撒ける。
早速船に返ると甲板に船の中に留守番していた男達が集まり鬼を決めていた。
ランダムらしく相手が誰か分からないようにと決めると仮面を付けた鬼が徘徊する。
誰か分からない様に頭に頭巾を被るという本格的な様子に楽しそうだと眺めた。
眺めていると近くにペンギンがやってきてリーシャに豆の入った袋を渡してくる。
それを見て自分も参加していいのかと少し驚いて聞くと当然だと言われ嬉しく思った。



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