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08


歌云々も彼女らの協力でリーシャだから開いたのではなく、母親のセレニーが歌える状況ではなかったと先に説明する。

「きっと私がこの島の人間じゃなかったからだと思う」

ローは成る程と納得してくれ、ベポも許せない!と賊に対して怒ってくれた。
もうそれだけで嬉しくてベポの腕をふんわりと握る。
怒ってくれる存在がいるだけでこんなにも精神が癒されることはない。
そこまで怒っていなかった身としても、怒らなくてはいけないのだと意を決する。
ゼロが元気良く手を振って山道を降りていくのを振り返して見送ると早速岩の場所に向かう。

「何もされてねェか」

「うん、ただ歌わされただけ」

「利用されたのに、もっと怒れよリーシャ〜………」

ベポがムスッとした表情で言ってくるのでベポが怒ってくれてるから十分だと笑う。
そうして、歩いている間にローから自分が居なかった時間にどうしていたのかをかい摘まんで教えてくれた。
まず、リーシャがいなくなった事を知ると武器屋の店主に心当たりがないかを聞くとこの山に勝手に住み着いている賊が拐った可能性が高いと言われ、セレニーという歌手の存在も知り早々に町長の家に行き財宝はもらうという交換条件で自分達の拐われた山へと来たらしい。
なんというか、その頭の回り様がローらしい。

「そっか………だから、ここに来たんだね」

「何で落ち込むんだ」

ローに指摘され言葉に詰まる。

「落ち込んでなんて」

「先に言っとくと別に財宝があるから助けに来たんじゃねェ。あくまでそれはお前を助ける際の"おまけ"だ」

「ほ、本当に?………あ、うん、でも、こうして助けに来てくれたことは凄く嬉しいな」

ローはその煮え切らない答えに納得いかなかったらしく眉間に皺が寄っていた。

「信じてねーな………しかし、まさかお前が自力で逃げてくるとは想定外だった」

その事に自分でもまさかそんな風に転機が訪れるとは思っていなかったので驚いてはいた。
改めて言われると非力な女なのに、逞しくなっているような気がしなくもない。

「遂に海賊として………耐性がついてきてるのかなぁ」

「将来が楽しみだな、くくっ」

吹き出すローに複雑な気持ちが湧いてくる。
そして、やがて先程賊を閉じ込めた岩まで来ると彼等は戦闘体勢へとなりリーシャにいつでも良いと述べて来るので一度深呼吸してから子守唄を歌う。

「……−−−」

ゴゴゴ、と地響きがして少しずつ岩の真ん中が開けていく。
歌に集中していると賊の男達がワラワラと怯えた顔をして出てきた。

「"ROOM"」

ローがあの言葉を唱えると青い透明なサークルが周りを包む。

「出られた!」

「え、なんだてめェは!」

「その財宝、おれたちが貰っていく」

ローがそう言うと刀を抜きスパンと数回空振りをした。
やはり、前回の時のように彼等がギザまれ、そして生きてもいる。
不思議な光景に歌うのを止めてゴゴゴ、と岩の扉を閉めた。

「ベポ、財宝を運ぶぞ」

「アイアイキャプテン!」

体のパーツをひっちゃかめっちゃかに繋げたローは颯爽と慌てる男達を通り過ぎ岩の扉の前に行く。
リーシャはそれに合わせて再び喉を響かせた。
一日にこんなに肺活量と喉を使うのは初めてだ。
疲れた体と精神も合間って、そろそろ限界を感じた。

「リーシャ?おい、」

声をかけてきたローに顔を向けると彼の顔がボヤけて見えた。
思考も上手く組み立てられず、曖昧に笑う事しか出来ない。
大丈夫だよ、という気持ちを込めたのだが伝わっただろうか。
悪転する視界に意識が沈むのを感じた。



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