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07


岩場にせっせと連れてこられてた。
その間にリーシャの頭の中は『ララバイ』でいっぱいであったのでそれどころではないが。
実は親子から聞いたララバイという歌をリーシャは知っていた。
それはかつて自分がこの世界ではなく現代にいた頃。
子供達が親を真似て歌っては繰り返していた風景を思い出す。
まさか、この世界でも同じ歌が歌われていたとは知らなかった。
しかもこの島限定となれば何となく偶然ではないと感じてしまう。
岩場の目の前に立たされると歌えと言われる。

「っ…………−−−」

息を吸い久々に歌う。
ゆっくりとメロディと歌詞を思い出して紡いでいく。
目を閉じて旋律を奏でるように胸を手で覆う。

よい子よ眠れ 母は近くに よい夢を見させよ 傍にいる 怖い夢などまやかしよ おやすみ坊や 悪い夢などまやかしよ 朝になれば現へ覚める 夜になれば今宵も月よ

いかにもな歌を歌い初めていけば地面が少しずつ地響きを鳴らしながら振動する。
歌うのをやめるなと命令され、止めそうになりながらも続行するとゴゴゴゴ、と岩の真ん中が開いた。
まるで、それはどこかで聞いたことのあるお伽噺を現実で見ているような、そんな気持ちになる。

「おい、あ、あ!あ!あれ見ろ!」

「黄金かあれ!財宝も!」

「や、やっとだ………!」

山賊達がぞろぞろとそこへ走っていく。
全員が入っていって、良い頃合いに歌をぴたりと止めてみる。
するとゴゴゴゴ、と開くよりも断然早いスピードで岩の扉が閉まりピタリと切断面が見えなくなった。
やっと緊張から解放され親子の元へ行くと二人は唖然として岩場を見ている。

「本当に開いた………」

「逸話は真実だったのね………ゼロ」

ソプラノ歌手であるセレニーがゼロを呼ぶと彼は母親と抱き合う。
微笑ましい光景に羨ましくなった。

(いいなぁ…………お母さん………)

同時に思い出してしまい涙腺が緩みそうになり慌てて二人に下に降りないかと提案する。
二人は頷き早急に村へと帰る為に岩場に背を向けた。

「でも、何で私の歌で開いたのでしょう………謎です」

「そうねえ………歌詞も同じなのに、不思議ね」

下山している間に疑問を提示するとゼロの母親はうーん、と悩み同じく不思議だと口にしたので疑問は解けないままだ。

(ローくん達に言うべき、じゃなさそう)

これは恐らく自分の生まれた世界が関係しているかもしれないと薄々感じた。
セレニーには喉が不調だった事にしてもらいゼロにも口裏を合わせる事を頼むと二人は首を傾げながらも快く承諾してくれて、一先ずは安泰だと息を吐く。
そうしてもうすぐという所で下の茂みがガサガサと鳴り三人は警戒の姿勢を取る。
茂みから見えた白い固まりにリーシャはハッとなり、驚愕に顎が今にも落ちそうなくらいに口を開けた顔を浮かべる親子を尻目に駆け寄った。

「ベポ!!」

「あ、リーシャ!見つけた!キャプテン!リーシャを見つけたよ!」

ベポの張り上げた言葉に彼も傍にいるのだと分かり急に安堵を感じた。
ガサガサと音を立てて同じく茂みから顔を覗かせた顔に泣きそうになる。
相手はこちらを目で捕らえた瞬間駆け寄って来てギュッと抱き締めてきた。
いきなりの行動だったが、リーシャも同じように抱きつきたくて堪らなかったのでその嗅ぎ慣れた匂いにローだと実感する。

「勝手にいなくなるんじゃねェ、バカ」

「うん………ごめんね………ローくん」

毎度何かに巻き込まれている自覚があるから、余計に申し訳なくなる。
それから、ゼロと母親とで、この島での危機はもうなくなったのだとローに伝えると説明を一からして大きな岩に閉じ込められている賊の存在を言う。
すると、ローは暫し考えるような素振りをしてそこに案内してくれと言うのでセレニー達には先に帰ってもらいリーシャが案内をする事になった。



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