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20


LAW side


「モンキー・D・ルフィに会いたいんです!」

目の前が真っ白になった。
女の発した名前は何度も聞き、ローにとっては色んな意味で興味の尽きない男だ。
そして、リーシャとも関連があると思われる海賊。
三億へと懸賞金が上がったニュースは今でもグランドライン全体を騒がしている。
エニエス・ロビーのニュースなんかは海軍を震撼させた。
リーシャにルフィの名を聞かせたくなくてユウカの手首を掴み部屋から足早に去る。
医務室に向かい鍵を閉めて女を放る様に手を離す。
手首をさする女に待つ時間を与えない。
ダンッ、と頭上に向かって強く壁を叩けば女はビクッと怯えて何故か恥ずかしがるように頬を染める。
恋愛物の小説の見過ぎかと過ぎるが下らない。

「どういうつもりだ」

「え、どういうつもりとは??」

「おれ達の前でその名を口にするとは、何を企んでやがる?」

「企むとか、そんなこと」

「黙れ」

簡単に口を閉じる女に内心笑う。

「今日はペンギン達の部屋で過ごせ。異論はねェな」

女が反応する前にペンギン達の部屋へ引っ張っていきノックをすればシャチが出た。
どうしたんですか、と問われ女を差し出す。

「変更だ。こんな女と寝たくねェ」

そう告げて、シャチに押し付けると自室に戻る。
部屋から気配がして、まだリーシャが部屋に留まっている事を知り扉を開ければ心配という表情を浮かべた彼女が居た。
会ったばかりの女に、何故そんなに肩入れするのかわからない。
不意に、彼女にまだここに居て欲しくて、理由を探しユウカがこの船に居るから一人は危険だという言い訳を思いつく。
この部屋で寝ろと伝えるとキョトンと首を傾げる姿に心の黒い塊が溶けていく。

(無防備な奴)

クスリと笑みを浮かべそうになるのを留めて言い訳を言うと平気などと根拠のない事を言う。
それは駄目だと言って、彼女が反論する前に手を引いて先手を打つ。
案の定、されるがままにベッドへ横たわる姿は仕方がないという風だ。
頭を撫でつけてくるリーシャに心地良さを感じた。
そのままうとうとと眠そうに目を閉じ始めた彼女を愛おしく思い睡魔に誘われる様子を眺める。

「リーシャ……」

(あの女の言葉を明日になったら忘れろ)

祈ってしまいたい程に不安で、失いたくなかった。



***



シャチ side


「変更だ。こんな女と寝たくねェ」

不機嫌な様子でやってきたローに不機嫌な声音で女を押し付けられ、終始不機嫌なままローは去っていくのを見送った。
何かがあったなど、ローと泣きそうな女を見れば一目瞭然。
変更と言っていたのでこの部屋で寝かせろと言う意味だと即座に理解しソッと労るように彼女を部屋に通す。
寝るにはまだ早い時間なのでペンギンとベポもまだ起きていた。
四人がぽつんと気まずい空気を感じていると、不意に目の前に居た異世界の少女が身じろぐ。

「私、何かしちゃったのかなぁ」

涙を浮かべていじらしく呟いた。
何があったのか、全く知らないがローの気に障った事があったのは確実だろう。
しかし、こうして何かしてしまったのかと言う者に、気に障った理由の検討が付かないのならば問うても意味はないと思い、取り敢えずどこかに一旦座らせようと三人の座る場所へ連れていく。
彼女はついにポロッと涙の雫を零して泣き始めた。
ローに振られたり、手を振り払われた女達のあしらい方やお引き取り願う事には慣れていても、こうしてただ悲しくて泣く少女の慰め方など到底知らない。
あたふたするベポと腕を組むペンギンに、慰める余裕があるのは自身だけだと溜め息を内心放ち、彼女の背中をそっと撫でる。

「船長になんて言われたんだ?」

「じ、ぶん、達の前で………あ、あんな事、言うなんて………何、企んでるって、入れたんですっ………ヒック、」

「あんな事?何を言ったんだ?」

「た、ぶん、ですが、ルフィに会いたいって言ったんですけど。やっぱり、他の海賊に会わせて、なんて、我が儘だったんですか?」

「ルフィ?って、あのモンキー・D・ルフィか?なんでまたそいつに会いてェーんだ?」

「ルフィは、ヒック、う、本の、主人公なんですっ」

「え!まじかっ」

「は、はい……麦藁海賊団を中心とした話だから……」

その言葉に興味が惹かれペンギンも質問してきた。

(おれ達の本とかあんのかな?)

益々気になる。

「その漫画におれ達もいて、どこで何をしてるんだ?」

「未来の事なので、その、」

「ペンギン!未来は知らない方がいいだろ?知ったらつまんないよ!」

咎めるベポにペンギンはそうだな、すまない、と反省したように肩を落とす。
彼女も涙がいつ間にか止まっていて、四人の夜は更けていった。



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