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19


ローの自室兼船長室に戻ると剣呑な空気が漂ってきた。
ユウカは何故か落ち込んでいる様な姿で怯えていて、ローは不機嫌を醸し出してソファに座っていたので何事かと目を見張る。
何があったのかとローに聞くと彼はあの女が余計な事を聞いてきた、とだけ言う。
それ以上口を開かなくなったローに仕方なくユウカに同じ事を聞くと彼女は何でもないですと言うだけ。
頑なに両者が語らないので首を傾げて途方に暮れるしかなかった。
どうしたら良いのかと悩んでいると緑茶の存在を思い出して入れるね、とキッチンへ向かう。
ついでにローと自分の分を入れようとカップを用意しお湯を入れて味を引き出して注ぐ。
良い香りだと感じ、二人の元へ持って行くと熱いからと忠告しながら渡す。
有り難うございますと言われて受け取る高校生に笑顔を向けてローにも渡せば彼は無言で受け取る。
自分もソファに座るとユウカに自身の隣に座る様に誘う。

「良ければ私とお話しよう?」

「は、はい」

彼女は怖ず怖ずと立ち上がりローの態度を気にしながらリーシャの隣に腰を降ろす。
これで真ん中にリーシャがいる状態で二人を引き離せた。
二人を隣に引っ付かせて座らせるのは駄目だと即判断した上でのポジション。
先ずは何から話そうと考え、彼女の情報を聞いてみる事にした。

「貴女の世界にはご家族がいるんだよね?何人家族?」

「三人です」

「そっか。帰りたい?やっぱり」

「えっと。トラファルガーさんに折角会えたのでまだそういうことは考えていません。それにシャボディ諸島にも行きたいです」

「そのシャボディ諸島に何があるの?」

恐らく彼女は原作を知っていて、それでそこへ行きたいと言っているのだろう。
この子は自分の事を優先しているのだとすぐに分かりどうしたものかと悩む。
すると、ローが横から不機嫌な声で窘める。

「おい、誰がお前をそこまで乗せていくと言った?次の島で降ろす」

「え?そ、そんなっ!」

「お前はまだ疑われてるんだ。誰がお前を乗せてくんだ。立場を知れ、図々しい」

「わ、私、お、降りたくないです!お願いです!何でもするのでこの船に乗せて下さい!」

ローはその発言に呆れた顔で嘲笑った。
その顔を見て少女は感情的に声が大きくなる。

「モンキー・D・ルフィに会いたいんです!」

「!」

「チッ!」

舌打ちしたのはローだった。
彼は乱暴に立ち上がると怒った様子で少女ユウカの腕を掴み無理やり立たせる。
きゃっ、と驚いた声を出して引きずられる女の子にこちらも驚き「ローくん!」と叫ぶ。

「ちょっと話すだけだ。お前はもう寝ろ」

「でも」

「いいから寝ろ」

「ローくーー」

バタンと無情にも扉は閉まり二人が部屋から出て行った。
寝ろと言われても寝られるわけもなくソファでジッと待つ。
自室に戻るなんてことも出来ないまま十分くらい居るとローだけが部屋に戻ってきた。
まだ寝ていなかったのかと言われ頷くとあの子の居場所を訊ねる。

「ペンギン達の部屋だ。そんなことより、今日はここで寝ろ」

「え?」

「あの女が居る間は、お前は非戦闘員だから狙われる可能性がある」

「んー、別に大丈夫でしょ」

「兎に角、疲れた。抱き枕になれ」

「わ」

何かを言う前にローがリーシャの腕を引いてベッドへ誘導した。
そのまま腰に腕を回され仕方ないと彼の頭をゆるりと撫でつけて目を薄く閉じる。
うとうととなると睡魔に任せ、意識を沈ませた。

「リーシャ」

名前を呼ばれた気がした。



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