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18


どこからどう見てもボールペンなのだが、羽ペンしか見たことのない彼等にとっては未知のものだろう。
彼女は得意気にそれをボールペンだと言って自身が異世界から来た証明にもなるも告げた。
確かにこれは立派な証明となるかもしれない。
ユウカはその上の先端を強めに押せばインクの出る先端が出てくると言うとローはその通りに押す。
そして、インクを書いてもよい紙に書いてみればいいと言うと彼は徐に、近くにあった海図にボールペンの先を紙に押し当て短い一線をキュッと書いた。
すると、綺麗にインクが出たので食堂の全員が驚きにざわりとなる。

「中にインクが入っているのでその場ですぐに書く事が出来るんです」

鼻高々に語る少女に船員を含め船長は彼女の異世界から来たという言葉を信じる意向に決めた。
自分は元よりボールペンの存在を知っていたし、彼女が痛いような事をされる事態にならなくて良かったと安堵する。
でも、だからと言ってローは敵意の線を完全に消したわけではなく、まだ警戒を続けるようにと、船員達にユウカへは内密に内通した。
リーシャにも気を付けろと告げてきたローに苦笑しながら大丈夫だと思うのだえれど、と言ったが彼は納得しない。
未来から、異世界から来たからと言ってこの船に無断で乗ってきた時点で侮れないと洩らす男に見つめる事しか出来なかった。

「その子は今、どこにいるの?」

「一応、ペンギン達と同室だ。寝首もかけねぇように、な」

「それだったらローくんの部屋でも良いんじゃ」

「お前も居るだろ」

「私?別に構わないよ?」

寝首を掛けるとも思わない。
なんせ彼女は高校生らしいし、高校生に殺しや盗みが出来るとも思えないのだ。
恐らくロー達にそれを言えば生ぬるい考えだと言われるが、リーシャとユウカのいた世界はそういう『生ぬるい』環境なのだと知っている。
ローは暫し考えて先ずは一日限定からと言うので賛成してからペンギン達には明日話しをつけておこうという流れで就寝した。



翌日、ペンギン達と会ったローは昨日話したウマを伝えると次にユウカを呼んで彼女へと伝える。

「今日はおれの部屋で過ごしてもらう」

「え、ほ、本当に!夢みたい!」

「!!?」

ローはユウカの喜びように至極驚いていた。
もし、リーシャがルフィ達と共に過ごせると言われれば同じ反応をしていただろうから気持ちは分かる。
ローは怪しむ表情を浮かべて「少しでも変な動きをしたら殺す」と彼女に忠告した。



その日の宣言通りユウカは二人のいるローの部屋へ来て一日を過ごす。
はしゃぐ様子に笑みを浮かべて「何か食べる?」と聞けば彼女は少し考えてから『緑茶』が飲みたいと言い出した。

「少しは遠慮しろ」

「ローくんっ、子供じゃないんだからそんな意地悪言わないで」

ローの呟いた言葉をたしなめれば彼は拗ねた様でリーシャを睨む。

「お前も余計な事をするな」

「だって、ホームシックになっても可笑しくないんだよ?」

「あの、私、この世界に来れて嬉しいんです」

言い合いをしていると怖ず怖ずと口にする少女に言葉を止める。
取り敢えず緑茶を得る為にはペンギンの元へ行かなくてはいけないのでそれを告げてから部屋を去った。
ペンギンはお茶の葉を集めるのに凝っていたのである可能性は高いだろう。
ペンギンの部屋に向かうと彼はすぐに応対してくれて緑茶を探す。

「緑茶。見つからないな」

「んーと、確か、グリーンティーとかいう別名もあるって」

「グリーンティー?それなら見たことがあるかもしれん」

徐に棚をゴソゴソと漁り出すペンギンにわざわざごめんね、と謝る。
気にするなと言ってくれた彼に頬が弛む。

「あった、これでいいか?」

「うん、ありがとう」

「ところで、あの異世界人の様子はどうだ?」

「特に変わった様子もないよ?昨日はどうだったの?」

昨日はペンギン達の部屋に泊まったので様子を訊ねれば彼ははしゃいでいたと疲れた風に言う。
シャチとベポが質問攻めにしてもまるでお泊まりのノリで語るらしい。
それにシャチもベポも楽しげで警戒していた自分に辟易したと言うので彼の気苦労を想像してクスリと苦笑い。
それも、そのはずだろう。
彼女は一般人のただの高校生なのだから警戒しても無駄なこと。
お疲れ様と伝えてリーシャは部屋を後にした。



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