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14


LAW side


起きたら知らない男が居た。
船長と自分のことをそう呼ぶ声に頭痛が走る。
頭を抱え思った事やこの場所とお前は誰だということを聞けば、驚く顔と呆然とした空気が流れた。
それから、幾人かの男達がやってきてローを取り囲むと質問攻めにしては悪い空気を感じた。
どうやら記憶喪失らしいと判断され、それから暫く己の詳細な情報と幼馴染みという関係の女の話をされる。
なぜだか、その女に無性に会いたくなった。
女の名を聞く度に心臓がざわめく。

「っ!」

船員と名乗る男達が去って数時間後にいきなり扉が乱暴に開かれ一人の女が現れた。
突然の訪問に誰だと聞けば男達と同じ反応をした女はすぐに笑みを浮かべて名前を言う。
この女がリーシャかとじっくりとその姿を眺める。
話題が途切れそうになると林檎を言ってきたので取り敢えず頷く。
部屋を出ていかれたくない。
そう思い咄嗟に反応したローは早鐘を打つ心臓を宥めつつも女の反応や表情を観察した。
穏やかに笑う彼女の髪はミルクを交ぜたような淡い緑をしていた。
ふわりふわりと何かをする度に揺れるウェーブがかった胸まである長さはつい手を伸ばして指先に巻き付けたくなる。
肌は健康な色をしていてとても触り心地が良さそうだ。
触れたい衝動に駆られて頬にスッと指を掠めれば女の驚いた顔が見え、つい「髪の毛がかかっていた」と嘘を吐いた。
それに恥ずかしそうに頬を赤く染めて感謝を述べてくる初な反応に心が甘く疼いた。
喉がカラカラに乾いているような錯覚を感じていると女が不意にふわりと花が咲くように笑う。

「貴方は、私の」

ローにとってのどんな存在なのだと問うて彼女は迷う表情をした。
その時、答えて欲しくないと心が軋み、ローの理性はその瞬間外れた。

無心に貪りたい、めちゃくちゃにしたい。

渇望を潤す為に、女の唇へと熱をぶつけた。



***



翌朝、食堂に現れたローが不機嫌を隠すことなく言った。

「昨日、ベポと衝突して以降の記憶がねェ。誰か詳しく教えろ」

………………………………。

「ええええええええ!!!?」

食堂に大きな声が一斉に放たれた。
そして、かくいうリーシャも唖然としていた。
まさか、ローが昨日の今日でもとの状態に戻るとは思ってもいなかったのだ。
全員が言葉を出せずにいるとペンギンがかすかに汗を吹きながら言葉を返し、昨日の詳細をローに説明した。
でも、どうしてすぐに戻ったのかもわからないので一応ペンギン達は精密検査をローに進めていた。
彼は神妙に話を聞いて成るほどと納得していると徐にこちらを見る。

(もしかして、昨日の事覚えて、たり……するのかな)

つまり、昨日のキスのこと。
あれをされてからすぐに部屋を飛び出して自室に駆け込んだ。
まだ今でも唇の感触を生々しく思い出すのに、それを持ち出されたらきっとまた部屋に駆け込んでしまう。
身構えていると、相手はこちらの気持ちとは裏腹にあっさりと話しかけてきた。


「おれの所にお前も来たのか?」

「え、え………う、うん。行ったけど…………」

戸惑いながらも頷くとローはそうか、と一人納得して踵を返した。
こちらがついつい問い返したくなる程あっさりと去る様子にどちらかというと凄く安心した。
あの事を覚えていないのだと知れただけでも、これからも普通に接する事が出来る。
その自答に違う心がこう囁きかけた。






本当に出来るの?



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