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同じく外で甲板へと視線を流していたローも行ってこいと言うので、本当は凄くやりたかった事を見透かされていたのだろうとかと思う。
甲板へ降りると皆がこっちの存在に気付きやっと来たな!と笑いかけてくれた。
一緒にやってもいいのかと聞くとペンギン同様に当たり前だろ、という言葉が返ってくる事に胸がほんわりと温かくなる。
豆を鬼に投げている最中で誰かは特定出来ない鬼に誰なんだろうと首を傾げていると近くにいる船員らにこうやって投げるんだぞ、と教わった。
自分がいた世界のイベントを体験する日を改めて懐かしくもやりたくても出来なかった思い出と共に今は胸の引き出しの中にし舞い込んだ。
今は楽しまなければと己に言い聞かす。
ポイポイと投げていると不意に鬼もしたくなって夢中になっている皆にバレないように船の裏側へ行き今日の裏役者達にやらせてもらえないかと交渉すれば彼等は困ったように互いに目配せし合うので頑張ってみる。
やらせて欲しいと頼み込むと渋々一人から仮面と頭巾を譲り受けた。
ついでに予備のツナギも着るという、女だと分からないように徹底して登場する。
わくわくしながら扉を開けると早急に豆が放たれ、意外にも結構痛いんだと初めての経験に滅多にない興奮を覚えた。
痛いけれど逃げるのも鬼になるのも楽しい。
一区切りの出番が終わると待ち合い場所の裏へ回り楽しかった、ありがとうと伝えるとそこに居た数人の顔が蒼白く身体も小刻みに震えていて様子が凄く可笑しかった。
どうしたのだと言っても、言えないとしか教えてくれなくて揚げ句にはもう豆を撒く側に行くといいと言われ渋々戻る。
何に怯えていたのだろうと気になりつつ豆まきのイベント会場に戻ると新たな鬼が出てきた。

「え?何か背が高い?」

ベポにしては横幅がほっそりしているし、と謎の人物を観察していると船員達が繰り返している豆を撒く行為を開始した。
一応リーシャも一粒軽く投げてみるとあろう事か鬼は一つの刀を懐から取り出し前に掲げるとスラリと刃を出現させる。

「確か、あの刀の名前って………鬼哭(きこく)だったっけ?」

リーシャが何気なく呟いている間にいつの間にか甲板の豆が飛んでいない事に気付く。
皆が皆驚きと怯えに染まった顔と空気を醸し出している。
それに構わず何となく豆を鷲巣かみ彼に向かって投げてみた。

「その刀が鬼なんだね………鬼は外っ」

ポイポイと飛ぶ豆を男は瞬時に切ったり弾いたりした。
豆まきは切られる為に投げているんじゃないと一瞬思ったが、もう何でもありかともう一度投げれば弾くの繰り返し。
それをやっていると彼らも戸惑いながらも少しずつ豆を投げ出す。
裏の待ち合い場所で顔を蒼白にしていた男達の理由を察してローも意地悪な性格だと内心クスリと笑った。
本当は参加したかったという本音を出さずに無言で参加する辺り楽しみにしていたのかもしれない。



豆まきが終わると次は年齢の分だけ食べるのだが、リーシャはそこで凄く迷う事になる。
確かにローより一つ上だからと思えば良いのだが、精神年齢を考えれば悩み所であった。
一体幾つ食べればよいのかと唸っていれば、もう適当に食べてしまおうと珍しく考える事を止めてぱくりぱくりと豆を見た目年齢以上食べる。
それを見ていたローがお腹が空いてるのかと聞いてくるので慌てて違うのだと弁解した。






甲板に向かうと船員達が円を組んで何やら腕も組んで何かに魅入っていた。
それを除き込むと理由を察して成る程、と苦笑して皆に話しかける。

「一体皆で何を話してるの?」

出来るだけ優しい笑みを浮かべるようにして聞けばリーシャの声に身体を座りながらにビクリと跳ね上がるように驚く。
そして、見ていたものをこちらへ見せないように綺麗に身体を前屈みになって隠す。
見事な連携に微笑みを崩さず「別にもう見たから隠さなくていいよ」と伝えると何故か船員達は涙を浮かべてごめんなさいと謝った。
謝った視線はよくわからなかったが、とにかく彼等はきっと悲しかったのだろうということは分かる。
そして、諦めたように前屈みを止めた隙間から見えたのは女性ばかりの写真が並べられていた。
もう少し詳しく言うと、手配書の写真が全員女性だったので男心が伺える。

「手配書の中でどの女が好みか言い合ってたんだよ………あははは、は………」

「そうなんだ」

「っ、ううう!」

(ええ!?)

何故かシャチや男性陣が涙目で突っ伏し出して驚く。
そうなんだ、としか言ってないのに。
どうして泣きかけているのか分からずにいると男性達が互いに肩を叩き合っているので空気を変えようと少し空いている場所に同じように座って手配書の写真を眺めた。

「どの人も美人だねぇ」

感嘆の声を上げてしまう程の美しい麗人達が並びそれぞれにアライブアンドデッドの文字があり小金額が並んでいる。
何となく思ったことを言っただけなのに周りの反応は予想以上だった。

「だろー!」

「お前も分かってんなァっ」

「リーシャさんはどの人がいいですか?」

興奮が伝わってきて更に苦笑する。
女の自分に女のタイプを聞くのはどうだろう?
取り敢えず期待に満ちた目から逃れられそうにないので目につき、更に親近感を抱くものを選ぶ。

「この人のオレンジの髪………綺麗………」

「泥棒猫のナミか」

近くに居たペンギンが聞いてきたので頷く。

「そっか、泥棒猫って言うんだね」

(二つ名なんてすっかり忘れちゃってるな………)

そして、もう一つ目についた手配書の名前を内心呟く。

「…………」

(悪魔の子、ニコ・ロビン………この人が仲間になってるっていう記事………見たことなかったけど、でも………ルフィ達はもう海賊団を結成してるのは確定みたいだし)

この手配書を見て感慨深く思い、思い出していると知らずの内に手に力が入っていて、力を抜いてナミの手配書を何気なく元あった場所に戻した。

「リーシャは泥棒猫がタイプなんだなー」

「え?タイプとか、そんなんじゃなくてただ綺麗だなって思った人を………」

全く話を聞いていないシャチ達に言うのを止めて手配書を全体的に眺めると見覚えのあるものからないものまで様々な顔ぶれに殆どの人が海賊なのだと自分にはない力強い雰囲気に憧れた。
この人達の様に強くなれば少しはこの海賊団を支えていけるのだろうかと自問する。
モンモンとした気持ちに首を振り思考を切り替えるように努め、彼等の話題に乗っかった。



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