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06


あれよあれよと連れてこられたのは何とも殺風景な場所であるのは、大きな人間よりも三倍はある岩ばかりだった。
男達は自分と男の子を一際大きな岩の手前で下ろす。

「これが見えるか?」

尋ねられて岩を見れば何の変哲もないただの岩にしか見えなくてハテナマークが浮かぶ。
男の子も意味が分からないという顔をするが男の一人は自慢げにこの岩に付いて喋り出す。

「この岩の中にはな、凄ェ宝が眠ってんだ」

しかし、特殊な方法でしか開かないようになっているらしく声に反応するらしい。
それはこの島に伝わる言い伝えで誰でも知っているらしく男は詳しい話はアジトでしな、と再びリーシャ達を担ぐと歩き出した。
たが、自分となんの関係があるのだろうと余計に思う。
この島の人間でもなく普通の女の筈だ。
疑問に思っている間にアジトらしきものが見え随分と凝った作りで長い間ここにいた事くらいは理解出来た。
中へ入るとやはり広く檻のようなものが視界の端に写りその中には人影がある。
やがて自分達もその檻に入れられやっと口を解放され息苦しさがなくなった。
すると目の前で男の子は最初からいた女性に抱きつく。

「おかあさっ!!」

「ゼロ!…………どうしてここに……!?」

どうやら男の子が武器屋で店主と言い合っていた拐われた母親らしかった。
感動の再開に良かったと思うが自分の危機的状況に参ってもいてどうしようかと必死に考える。
そういえば男達は岩の事について男の子に聞けと言っていたことを思い出す。

「話の腰を折るようですいません。私、リーシャと申します」

事は重大な気がして名前を先に名乗ると女性はセレニーと名乗りこの島の歌手で男の子の母親だと口にし、男の子もゼロだと名前を紹介される。
次いで男達の話しの詳細を知りたくて今の状況を説明して欲しいと頼む。

「この島には古くから伝説があるんです」

「あの大きな岩に関係する事なんですか?」

「はい。極上の声で歌われたとき、その扉は開くと小さな時から聞かされていました」

ゼロもその言い伝えを詳しく言い、盗賊達が母親のセレニーが島一番の歌手だと知り財宝が欲しくて拐ったのだと言われ益々自分が拐われた理由が分からなくなる。

「母さんが歌っても開かなかったんだ」

ゼロが悔しげに述べ母親は慰めるように抱き締める。
昔も試した事があったらしいがその時も岩には何の変化も訪れなかったらしい。
今回もやはり開かなくて盗賊が諦めかけていたときにハートの海賊団がこの島にやってきてとある情報に飛び付いたらしくずっとここに居たセレニーは彼等が喋っていた事を教えてくれた。

「ナイチンゲールが居る、とあの人達は騒いでいました」

「!………それは、」

ただの二つ名に過ぎないものだ。
戸惑う思考に一旦それを振りかぶり、ゼロ達に詳しい話の続きを足していくと彼女等の口から「ララバイ」の物語が出始めた。
この『バニッシュ島』には昔から母が子供に歌い聞かせる子守唄があり、その子守唄にはとある場所を不思議な力で守るという逸話。
何か災難や厄災が起きた時に子供を守れるようにという願いが込められたという。
その場所は先程連れていかれた岩で、そこにはとある海賊が財宝をそこへ隠した場所でもあるというので驚きだ。
鉄壁の場所なら誰にも奪われないと踏んだのだろうが、今の今まで中身がなくなっていないという事は既にその海賊はこの世にもいないだろう。
しかし、その物語に大きな疑問が残る。

「誰でもその場所を開けるのなら、可笑しくないですか?」

「そうなんです。話にはまだ続きがありまして」

「いつからかは知らない。誰が言ったのかも分からないけど"極上の女が歌うと開く"なんて話が付け加えられたんだ」

「ご、極上………?美人とか、そういった意味ですか?」

「いいえ、極上の女の歌声ですよ」

「うちの母さんの歌は最高なんだぜ……!」

ゼロは得意気に自慢するが、今のこの監禁されている状況を思い出せば賞賛するべきか悩みどころである。
だが、島一番のソプラノ歌手がいるのに何故全く関係のない民間人であるリーシャを本当にナイチンゲールのようだからと言われているだけで連れてきたのか分からなくなった。

「もう一度言いますが、私の歌では開かなかったのです………」

「………」

「お前が"ナイチンゲール"って二つ名を付けられてるから掛けをすることに決めたのさ、おれらは」

「!!………そんなのただの海軍とか人が勝手につけたものなのに………」

三人の声を割るように入ってきた言葉に後ろを向くと人相の悪い男がニヤニヤしていてこちらを見ていた。
ニヤリ顔ならローの方がずっと格好いいと内心思う。
声もあの優しいテノールがすぐに聞きたい。
悔しさと悲しさと寂しさに唇を噛みたくなるが、迎えにきたローにとやかく言われるのは嫌なので我慢した。
しかし、ナイチンゲールという二つ名はあくまで最近新聞の記者がが付けたものなのに、ずっと前の物語と結びつけるのは無理があるように思えた。

「とにかく試せるもんは試す。こんな島、財宝が眠ってるなんて事を聞かなきゃただの寂れた島だ。おれ等だって早く出てェんだよ」

フン、と鼻で笑う海賊にリスクを犯してまで財宝を手に入れる執念が信じられない。
ローがいつここへやってくるかも、助けに来られるかも分からない現状にただ焦りが増す。
鉄格子を掴むと男達がこちらにやってきて三人を外へ出した。
今から岩場に向かうと言い、三人を拘束しながら寝具炉から出る。
太陽は真ん中より下にあったので連れてこられてから裕に一時間は経過しているかもしれないと思った。



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