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04


ペンギンが島に着くのは明日と言っていたので洋服をベッドに並べていた。
ワンピースも動きやすいズボンも捨てがたいと悩んでいればコンコンとノックが聞こえたのでどうぞ、と足す。

「お風呂入ったからもう皆いないぞ」

「ありがとうベポ」

入浴の時間かと用意してあったパシャマを持って脱衣場に向かう。
服を脱ぎカララ、と湯船に繋がる扉を開けてお湯を被り全て済ませると大浴場に身体を浸ける。
ふう、と一段落したと息を漏らせばカララ、と扉が開く音。
誰かが入ってきたのだと認識する前に焦った声音が響く。

「っ、悪ィ………!」

「あ、ローくん。別に大丈夫だよ。出ていかなくていいから、入りなよ」

「今すぐ出てく、は?」

焦るローに対しリーシャの声に立ち尽くす彼。
お湯の波の音だけがする浴場。
みるみる眉が下がっていく男におや?と思うと少しデリカシーがなかったかと苦笑する。
自分は見た目と違い精神年齢を重ねたからか疎かな部分があって、ときにそれは人を困らせてしまう。
今のように。
待っているとヒタヒタとやってきたローが目の前で止まり、そしてシャワーが並ぶ場所に行くと身体に向けて水で流した。
終わると躊躇しながらも離れて湯船に入ってきたので離れるのかと内心残念に思う。
疚しいこともないのにと思うとローのぐったりした姿に目を丸くする。
どうしたのかと聞くと悪魔の実を食べた代償だという。
お風呂ですら力が入らなくなるのかと初めて知ったことに無知だと落ち込んだ。
思い直そうと色々考えた結果ローのところへ近寄る。
何故近づいてくるんだ、と過剰に反応する彼に悲しくなりながらも溺れたら助けられるだろうと力説。

(ローくんもルフィも同じ悪魔の実の能力者ってことは)

考え込んでいると不意にローが話しかけてきた。

「今何を考えてる」

「何も、考えてないよ。ローくんが溺れませんようにって祈ってるだけ」

「……………フフ、そうかよ」

納得してなさそうな顔をしていたが笑ったので笑い返す。
ふふ、と笑えば先ほどの距離もなくなったので安堵した。
そういえば彼はルフィの事を考えた直後に何を考えているのだと聞いてくる。
それは偶然か、意図的か。
リーシャには分からなかった。



***

ペンギンside


あの島の誘拐事件から数日経過したが今でも彼女は何かを考えているようだった。

「ペンギンくん、洗濯物ある?」

リーシャが部屋に訪ねてきたので返事を返して本から目を離す。
今だけ見ても何らいつもと変わらない。
少し上げられた口元も目尻が低く表情は穏やかに見える。
しかし、ローはどこか難しい顔をして彼女を見るようになった。
ペンギンは人が死ぬところを見たことがないリーシャにトラウマが残らないかと心配していた。

「ないな。わざわざ来てくれたのにすまない」

「ううん。それよりも次の島まで後どれくらいかな?」

気にした風もなく尋ねられた質問に二週間後だと言えばまだまだ先だね、と口にする。
同意すると洗濯物集めに戻らないといけないのだと用事を思い出したリーシャは部屋から去った。



***



洗濯物を集め終わり外に干すと一息入れようと甲板に行く。
先客がいたようで人影があった。
ベポのお腹に寝そべるローと熟睡する白熊にクスッと笑う。
気持ち良さそうに寝息を立てる彼にそっと近づくと顔を覗き込む。
するといきなり眼が開き黄色いブラウン寄りの色が見えた。
起きていたのかと驚いているとグッと腰に手が回り引き寄せられ厚い胸板に顔が当たる。

「わ、いきなりどうしたの?」

「…………………………お前は」

「え?何?」

「お前は、あの貴族の男の事、気になってんのか」

ローの弱々しい声に驚いたし、ビアンのことを口にしてきたことにも同様だった。
確かにビアンのことを気にかけていることは当たっていたが、何故こんなにもか細い声を出すのかが理解出来ない。
そんなことを何故聞くのかと訪ねれば歯切れ悪く「好きになったんだろ?」と予想外の事を言われ暫し思考が停止した。
え、とやっとのことで声を絞り出すとローは不安げな顔つきで見上げる。
不安定な心が見えてしまえる程瞳が揺れていたので本気でそう思い込んでいるのだと知った。
笑い飛ばせないような空気に戸惑うとそろりと慎重に言葉を選ぶ。

「それは、ないよ」

「本当にか」

「うん。それに、彼と話したのは少しだけだし」

最後まで断言するとローは安心したようにリーシャの肩に顔を埋め深く息を吐く。
くすぐったかったが我慢。
よしよしと頭を撫でると顔を上げた彼はその手を掴み口付けを落とす。
動揺して驚くもローは気にした風もなく唇をずっと押し続けそのまま目を閉じた。



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