×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

鳥は威嚇し、詐欺師は惑う
ピンポン、と玄関の扉のインターホンが鳴りローに出るから、と告げて覗き穴から外を見て、人の良さそうな人が前に立っている事を確認してドアを開けた。
ガチャ、と開く。
スーツを着た男性がリーシャを捉えると目を見てトークを披露し始める。

「どうも、お忙しい中で取り次いでいただきありがとうございます。私は株式会社の××という株をオススメしている者ですが、初心者という方にも買いやすい株をご提供させていただいています。株にはご興味ありますか?」

どうやらセールスだったようだ。

「いいえ、私はいいです」

断ってしまおうと、きっぱりと言うと相手は残念という顔をしたが、まだ食い込んで聞いてくる。

「では、ご親族はいかがでしょうか?」

「いえ、いいです」

「では、こちらの物を渡しておきますので−−」

「いりません」

断ると彼は、今度は株とは違う商品を進めてくるので、そこでやっと悪質なものだと知る。

「あの、私、本当にいりませんか、」

「リーシャ」

名前を呼ばれ振り返ると無表情のローが真後ろに居た。
困っていると目で伝えると彼はリーシャを軽く後ろにやり、男性の前に出る。

「彼氏さまですか?」

「旦那だ。後、今すぐ消えねェと録音した今の会話を警察に提出する」

「ええ!だ、だんっ……!てっ」

スラスラと出てくる言葉に唖然としていると慌てたように男性が去っていく足音が聞こえ、ややあってローは玄関の扉を閉めた。
今はもう悪質な訪問者よりもローのとんでも発言に口をパクパクと動かすしか身体が動かない。
そうやって玄関で硬直しているとローが手を引いて居間にあるテーブルの場所へ座らせ、リーシャは人形のように座る。

「ロ、ロー……さっきの……あれだよね、あの人を追い返す為の嘘言ったんだよね?……も、もう、ローってあんな事も言う」

「不快だったか」

言葉を遮られ、真っ直ぐ見てくる相手にジワジワと羞恥心に駆られて口からはあ、とかち、とかしか出てこない。

「不快、じゃ、な、ぃ」

小尾が小さくなりながらも言い切るとローが笑みを浮かべて、なら問題はないな、と会話を完結させた。
リーシャは自他共に認めるドライで、何事にも動じない性格だった筈。
でも、今はローに翻弄されて惑わされている自覚は凄くある。
詐欺師じゃない男にマジシャンが振り回されるなんて少し前までは想像も出来なかったのに。
肘を付いて手で顎を支える体勢の彼が微笑みを浮かべながらこちらを眺めてくるのを、何だか悔しく思い、入れてくれた紅茶を一口ごくりと飲み干した。


prev next

bkm [ top ]