恋人になって早、半年。
詐欺(?)事件からもう半年も経ったのだと思えば感慨深くなる。
そうして部屋でポーッとしていると後ろからコーヒーを差し出され受け取ると、彼が隣に座りテレビの方を見やった。
そこには『詐欺の予防特集』と見出しがあり、隣のローを盗み見ればバッチリ目が合って、ローから目が逸らされる。
その行動にクスクスと笑う。
「懐かしいね」
「おいおい、質の悪い詐欺と俺の詐欺を同等に並べんじゃねェ……」
「ふふふ……そうだね。ローの場合は愛ある詐欺だね」
「そうだ……愛詐欺だ」
そう言って断言するローにまた笑いが込み上げてくる。
この半年は本当に色々あって、ローをさん付けしていたのが、気付けばローと呼んでいて。
それはローがそう言わせるように誘導していたり、というものもあったり。
二人で色んな事をした。
「この間、ペンギンさんがお土産でくれたラーメン。あれ、なかなか美味しかったよね」
「南の方の土産な。確かにあれは口にした事のない味だった」
「え?それ、褒めてる?」
「褒めてる……今度そこに行くか」
「遠いしお金も掛かるけど」
ローも気に入ったのか、そう言うので目をパチパチとしばたかせると彼は何食わぬ顔でそんなのは分かっている、と言う。
「休みをまとめて取って、全く手の付けてねェ給料を使うだけの事だ。特に何も問題はない。お前も休み取れそうか?」
医者のローはお金持ちと言っても過言ではないが、それに頼る事は今までなかった。
金づるみたいに思ってなかったし、ローからもそういう事を言って幻滅されたくなかったので触れなかった。
マジシャンもアルバイトのようなものをしているだけなので、休み等取ろうと思えば取れる。
大丈夫、と言うとローは棚からゴソゴソと何かを取り出し、互いに見えやすいように真ん中に置く。
そこには旅に行く為の県外のオススメスポット等が載っている薄めの本だった。
いつの間に、といった心情でローを見れば、彼は得意気にニヤリと笑い、どこに行きたいのかと聞いてくる。
「ローって予言も出来るの?」
「ああ。凄いだろ?」
「いやほんとびっくりした。あ、これ美味しそう……しかも安い」
「別に高かろうが構いやしねーよ。好きなもん食べて行きたい場所に連れてってやる」
「え!……今、キュンってした」
「くくく、まだまだこんなの序の口」
そう述べて、ローはリーシャの髪を一房取ると指に巻き付けて目を妖しく細めた。
「俺に任せとけ。朝も昼も、夜も……」
「ちょ、」
バシッと胸板を叩いたけれど、彼はケロリとしていて、クスリと笑ってキスを一つリーシャに送った。
これが今の日常