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罪状、及び判決
「えーこほん、これから君達の罪状を発表します」

「裁判長、異議ありです」

挙手をするシャチにピシャリとお黙り、と言う。
リーシャの目の前にはシャチとローとパーティーで知り合ったペンギンが居た。
今回の詐欺騒動の仕掛け人達を集めて、とシャチとローに言えば、ペンギンという男が来たという事に驚いた。
まさか彼も荷担していたとは、と相手を見ていればペンギンは反省しているという誠意に正座をして改めて謝ってくる。

「いえ、別にいいんです。これから裁判をして判決を出しますから」

きっぱりと告げると三人は肩を落とす。

「では、罪状。一般人の私を騙し、詐欺られたと言ってパーティー会場に行かせ、罪人、トラファルガー・ロー氏に接触させた。この内容に間違いは無いですね、シャチ氏」

「は、はい」

「本格的だな」

ローがポツリと呟けばシャチが、だからリーシャは怒らせない方が身の為なんです、とコソコソ言い合う。
それを無視して続行。

「では、次にペンギン氏。パーティーに来た私をトラファルガー・ロー氏に紹介し二人を合わせる手引きをした。そうですね」

「はい……本当に罪人になった気分だ……」

「終わるまで俺達はあいつにとって罪人だぜ……ペンギン」

シャチは余計な事を喋り過ぎる。

「次にロー氏。貴方は私と接触し、下心で近付き、カニを持参し私の好みを的確に突いてきました。これは誰による情報ですか」

「シャチだ。食べる事が好きだと聞いていたから、旬な物を買った」

「あれは非常に美味でした。では、その後、私が不摂生を繰り返していたのに止めなかったのは何故ですか?シャチ氏から聞いていたのでしょう?」

「まさか、本当に実践して成功させるとは予想してなかったんだ……すまねェ」

「俺も。まさかそんなにお前が俺のことを思ってやってくれてたなんて……いだ!」

シャチの言葉にスリッパを投げつけた。
おかげで風邪を引かせてもらいましたよ!
皮肉を告げて罪状を続けた。

「ではロー氏、貴方に問います。何故カミングアウトする予定だった退院の夜に私に真実を告げず、あのような事をしたのですか?」

「え?ローさん何したんですか?いで!」

「今はシャチ氏に聞いておりません。答えなさい、ロー氏」

片方のスリッパを投げつけシャチを黙らせるとローに向き直る。
彼もこちらを真っ直ぐ見て答えた。

「告げようとした。でも、失うのが嫌で……あの時、せめて俺の気持ちだけでも、と……結局告げる勇気が出てこなかった」

「そして、退院の日、シャチ氏から真実を聞き、貴方と電話で話した後に貴方は私の家に来て弁解と謝罪をしに来ました。全てを言い終えたあの時のあの言葉は全て本心……これがこの事件の全貌ですね、ロー氏」

「ああ。裁判長……あの日の夜のあの時の言葉も全部本心なんだよな?」

ローが聞いてくるがそれに答えず、リーシャは採決を告げる。

「三人に裁決です。有罪に処します。三人はすみやかに私の入院費を相談し合って分けて支払うことを命じます。以上、閉廷」

三人の安堵の表情が見えた。






裁判を終えてペンギン達には帰ってもらう。
ローはまだここに居ると言うので、仕方なくお茶を出してテーブルに置く。
彼はちらりとこちらを見たりと忙しなく落ち着きがない様子でいたが、それに何か反応するなんて事はしなかった。
何をしたいのだろうと思いながら正面に対峙するとローが口を開く。

「さっきの、答えを聞いてない」

さっきの、とはつまりあの時の言葉が本心かどうかという事だろうと直ぐに察しがついた。
答えを黙って待ち続けているローの気持ちは分からないでもない。
何故なら、真実を告げてきたローとキスをし合い、お互いに想いが通じ合い、めでたしめでたしとなったと思われただろうが、そうは問屋が許さなかった。
あの後、それ以来……ローとは特に何もしていないし話してもいない。
だから、なんのアクションもないリーシャの「好き」と言った言葉は本当はだったのかと再度確かめたくなる心情は理解出来た。
座るローをスッと見て、訊ねる。

「私と……付き合いたい、という件でしたよね」

「ああ。俺の記憶が正しければお前も同意をした……それを改めて答えを聞きたい」

ローから真剣な空気を感じ、目を逸らしたくなる。

(まともに好きになる人が出来るなんて思わなかったんだもん。それに、騙してまで好きにならせるとか……今時そんな肉食がいたなんて、絶滅種にも程がある……)

この歳になるまで恋と言うものや、男性を男として見る事なんてなかった自分にとって、こういった経験もないから免疫がない。
だから、どうすればいいのか“迷って″いるのだ。

「………………私、誰かと付き合ったことが、ないから……だから」

言葉を選んで伝えていくと、ローがその先を遮るように力強く言う。

「俺の物になってくれ……ただ頷けばいい」

応えやすいように誘導してくれるローに、その優しさに胸がギュッと堪らなく締め付けられる思いで、コクン……と首を縦に動かす。

「わ!」

その瞬間、ローが丸い小さなテーブル越しから勢い良く体を乗り出してリーシャを抱き締めてきた。
勢い良く動いて、お茶が零れそうだと思ったが、その思考は一瞬で真っ白になる。

「後悔はさせねェ」

とても抱擁感のあるテノールの声に早速、受けて良かったと、照れくささを感じつつも手を背中にソロリと回した。


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