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- ナノ -

09
ローからの返事が聞こえなくなったので、丁度良いと電話を切った。
結局、何故騙す真似事なんてやったのか分からずじまいだ。

「ははは……私、そんな事される記憶もないし、おまけにローさんとも会った事もないのに騙してくるとか」

シャチもグルで、ローもグルで。
もう誰を信じればいいのか、何を疑えばいいのか分からなくなる。
おまけのおまけに、馬鹿みたいにローとキスも済ませてしまった。
大切な好意すらまやかしだったのだ。
ローが好意を寄せるフリをして、リーシャが彼を好きになるかをきっと二人で賭けていたのかもしれない。
ゲスい思考にあり得る可能性へ反吐が出そうだ。
もう二度と二人には会わない、と心に決める。
メアドも住所も電話番号も全て変えてやる、と立ち上がった。
その際に、カーペットに一つ、ポタリとシミが出来る。

「は、私、何で泣くの……泣く必要なんてないのに……騙されてたんじゃない、私が騙してやっただけだもん……悲しくなんてないっ」

ゴシゴシと目元を服で拭いてリビングに向かおうとすると、部屋のインターホンが鳴り、こんな時に誰だろうと訪問者の顔をモニターで確認する。

「っ!何しに、来たんですか?“トラファルガー″さん」

『俺の話しを聞いて欲しい』

「何故私が貴方の話しを聞かなくちゃいけないの?…………帰って」

そう言い捨てモニターを切る。
腸が煮え繰り返す感覚に足音荒く顔を洗いに洗面所へ向かう。
幸いにも腫れてはいなくて、少し赤くなってしまっているだけ。
冷たい水で顔を洗うとベッドへ向かい、もう何も考えたくなくて目を閉じた。








眠りから覚めると時計をチラリと見やる。
眠ってからまだ三時間しか経過していない事に寝返りを打つが眠れない。
仕方がないと起き上がり、身支度を済ませてバッグを肩に掛ける。

(こういう時はお酒に限る)

コンビニにでも買いに行こうと思い、玄関へ向かい靴を履くと扉の鍵を開けて外へ出る。

「…………!?」

いつもの風景がある外に目を向けたとき、視界の下の隅に黒くて丸いものが居た。
恐る恐る見ているとその黒い何かは、

「やっと出てきたな」

「なっ、ローさん……?何でここに、いつから……」

人影だったそれはロー本人だった。
いつからここに居たのだろうと思ったが、そんな事は関係ないとそっぽを向く。

「帰って、二度と私の前に現れないで」

ドラマでしか聞いた事のない言葉をまさか自分が言う日が来るなんて思いもしなかった。
突き放す言葉を述べて階段のある場所へ向かおうとすれば、腕を掴まれグッと引っ張られる。
文句を言おうとする前に相手の胸板へ顔がぶつかり息を呑む。

「聞いてくれ、頼む……頼むリーシャ……」

切ない声に、憎らしい相手なのに、リーシャの胸は焦げるような痛みを感じた。


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