×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

ヤキソバを買うと次はジュースだとジュースを売る場所に行く。
こういう時、一緒に纏めて売って欲しいと思ってしまう。
並ぶのも大変だし待つのも大変。
こんな炎天下では尚更という感じである。
行列はやはり長い。
けれど、従業員が多くて全員がフルで働いているのでスムーズに人が捌けられていく。
自分の番が回ってくる前にクローウィがやってきた。
ジュースだから早めにいけたのかと思いきや、親切な人達が順番を譲ってくれたのだと朗らかに言う。
絶対に彼女は今回自分の美貌を最大限に活かしてきた。
時と場合によって使う彼女を嫌な女だとは思わない。
だって、彼女は別に譲ってだとか、男に媚を売るなんてしない。
勝手にどこの誰だか知らない人が炎天下の元に居る時間を己の判断で増やしただけに過ぎないと解っている。
でも、羨ましいとは思う。
主に、時間を短縮できたという点で。
美貌を羨むなんてとっくに喉元を昔に過ぎてしまっている。
羨んだ分、その美貌で得るデメリットを見ている事も理由だ。
美人は得だなんて言われているが、この世界では元の世界程モラルや人権が保証されていない。
彼女曰く、大物貴族、世界貴族、又は役人に目を付けられやすく、付けられた場合、死んだ方がマシな人生になるだろうと聞いている。
世界貴族の話しは各地の島でも絶えず聞こえてくる。
新聞にもかなり政府に情報操作された内容で報じられている。
良くそんな人達を野放しにしている政府を信用できるな、と白い目でいつも新聞や海兵達を眺めているのは珍しくない。
確かに、クローウィが例え一般市民だったとしても、どこかの権力者に目を付けられ無理強いされる未来は強ち無い訳でもないだろう。
既に海兵の被害も受けている。
彼女は何を信じているのか時々不思議に思う。
あと、精神崩壊していない理由も。

「おまち!」

受け取るとヤキソバの芳醇な香りが空腹を助長させてお腹がクルル、と鳴く。
食べたい。
ツバを飲み込みクローウィの所へ行くと、彼女は座る場所を探そうと歩き出す。
ボディラインを見てこっそりその美しさにぽうっとなる。
秘訣を知りたい所だ。
歩いていると四人組がこちらへやってきて分かり易い通せんぼをしてくる。
子供かよ、と呆れる。
馬鹿か、と鼻で内心嗤う。
クローウィを口説けるなんて、思ってない事を祈ろう。

「ねえ、俺達と遊ばない?」

紳士ぶってるけど、チャラケタ雰囲気が隠せてない。
頭すっからかんにして出直してこい。
クローウィ程の美人は本来声を掛けるのも憚られる程の美人。
周りは手を出しあぐねているのに、この男達はそんな空気を無視して話しかけてきた。
クローウィはこういう男達は好みでない、というのは何となく知っている。
逆の人間性が好みというのも知っているから、口説く前から脈無しな訳であった。

「無理よお」

一刀両断。
綺麗に切った言葉に男達はめげずに言う。
こいつら絶対リーシャの事に気付いていない。
確かに身長が低いから目に入り難いにしても、見ようとすればちゃんと見える範囲に居るが。
馬鹿を見る冷めた目で見ていると口説いている男が漸くこちらに気付いて良いことを思い付いたという表情。

「その子も一緒で良いからさ」

一言言いたい。

てめー何様だよ。

ってね。
そもそもクローウィとリーシャの二人の行く手と時間を邪魔したのはこいつらなのに「その子も一緒で良いからさ?」だって?
アホか、初めから二人だったし。
それに、何参加権与えますとか抜かしちゃってんの?
お前にそんな権利ないからー。
クローウィも口説きに応える気ないのも分かってない奴に上から目線されなきゃなの?
馬鹿にした笑みを浮かべるとクローウィは朗らかな口調で言う。

「私は元からこの子と遊ぶ為にここに来たのよ〜?何で貴方の許可が必要なのお?」

至極正論に男は詰まる。
馬鹿でぇ、頭の中スッかすっか。

「そ、そんな訳ないよ。そんなつもりは無かったんだっ。いやいやー。き、君ら、仲良いんだね〜」

男達はクローウィという上玉を逃したくないのかまだ言い募る。
優男にジョブチェンジするまでに至ってきた。
似合わねーぜあんちゃん。
コホン、ハードボイルド入ってた。

「貴女にそれが関係あるのお?」

暇になってきたのでヤキソバを食べる事した。

「な、ないけど。ええっと。ふ、二人は友達?」

「いいえ、姉妹です」

ヤキソバを開けながら言う。
男達は驚愕の眼差しでクローウィとこたらを見比べ似てないという感情をした表情で見てきた。
嘘なのに、馬鹿だなあ。

「へ、へえ……どっちも個性的な可愛さだから似てないなあ」

ほんと、馬鹿。
嘘でも「確かに似てる」とか合いの手入れてくりゃあいいのに。
馬鹿は馬鹿なのだろうと諦める。

「あらあ、ありがとうー」

クローウィが笑うので好機と取ったからか、相手は姉妹で遊ぼうと空きもせずリプレイよりも飽き飽きする台詞を言う。
好い加減諦めなよボーイ。
哀れな独り身さんに囁く。
彼女居るかもしれないけど、居たら居たらでそれはそれ。

「リーシャちゃあん、あっちで食べましょう〜」

日陰を指して言うので頷いてヤキソバを咀嚼。
彼等は行ってしまうのを恐れて引き止めている。

「私、さっきお断りしたわよねえ」

困ったように、悲しそうに言うクローウィに周りで密かに聞き耳を立てていた周りが一気に男達へ牙を剥く。
ものの数秒で男達は周りの殺気で二の句すら告げれなくなる。
クローウィは王様を影で操る参謀ではなく、参謀の妻的な手腕を兼ね揃えているのではと頼もしく感じた。



夜、一頻り遊んだので既に体力もなく、直ぐに寝たかったがクローウィがうとうとするリーシャの気付けに温泉に入ろうと誘ってくれた。
温泉だなんて懐かしいシロモノにテンションは上がるというもの。
あまり大浴場だとかいった類の人が入っているものには苦手意識もあって行かなかった。
けれど、懐かしさに絶対に入ると決めていたので浴衣とタオルを持って女湯に直行。
女湯の暖簾のれん を潜った瞬間から懐かしい硫黄の匂いが立ち込めていた。
懐かしさを堪能しながら温泉の脱衣所へと進めると木製のカゴが置かれた場所、ではなくロッカーの棚があったのでそこで服を脱ぐ。
この世界の治安を考えればロッカーになってしまうのも致し方ない。
しかし、温泉は期待している。
タオルを巻いて行くと既に客が居てざわめきが浴室を満たしている。
お湯の湯気もいい感じにあるから雰囲気は完成されていた。
クローウィも続いて入ってきた。
この温泉はワノ国という新世界にある政府の非同盟国からインスピレーション、及び刺激されて制作されたらしい。
新世界に入って温泉には入れたのは幸運である。
手筈通りに温泉に入る前に身体を清めて足を湯船に入れる。
広いし熱めであるが、これも温泉の醍醐味だ。
クローウィも真似をしながら入っていく。

「暑すぎない〜?」

「我慢すれば慣れますよ」

苦笑して肩まで浸かる。
温泉の温度と匂い、民衆浴場故のざわめき。
五感の内四感を刺激されて心が満たされる。
ふう、と感嘆の息を吐く。
リラックス効果や効能が心にまで作用するなんて流石は温泉。
人が居るのにのんびり出来るのはこの施設故。
まったりとクローウィと入って長風呂を満喫して上がる。
上がった先には浴衣似の寝巻き。
クローウィの胸が少し見えている。
谷間なんて羨ましい。
同じ施設に居る男性達が二度見して立ち止まり鼻血を出す。
湯上がりと結髪のコンボもある。

「あ、卓球!」

思わず叫んだ。
ちょっとした運動が出来るスペースに卓球台があった。
懐かしさで腕がウズウズする。

「やりたいな〜」

呟くように言ったのが聞こえたのかクローウィが「じゃあやりましょうよお」と言ってくる。
願ったり叶ったりな申し出に大きく頷きスタンバイするとクローウィが球を弾く。
テレビで見ていたからか知っていた様子だ。
だが、懐かしいからといって上手いわけもなく、やったのは高校ぶりだからスカした。
恥ずかしさを紛らわすために苦笑をしながら球を拾いに行く。
少し重めだけどカッと弾いて始める。
クローウィはそれを苦なく返してきた。
上手い、自分より。
運動神経も関わっているスポーツだから反射神経の良さが試される。
しかし、それを数分やると身体も温まってきてやるのも慣れてきたのでスムーズに試合が進む。
遂にはスマッシュまで出す域に。

「わ!く!」

「そおれぇー」

やはりクローウィが体力的に有利だ。
白熱した試合に夢中になっていたからそこそこの野次馬が出来ていたなんて知らなかった。
だから、一旦休憩を取ろうとしたら拍手やらが聞こえてきたのでギョッとなる。
いつの間に………と固まっているとその野次馬の一部がハートの海賊団で出来ているのに気付く。
いつから見ていたのだろう。
もじもじとなりそうな空気に喝を己に入れて卓球のラケットを置く。
クローウィにもう戻ろうと声をかけていたら、野次馬から一つ前に出てきた男が居た。

「俺と勝負してくれ」

「なぜです〜?」

「賭けをしたいからだっ」

「は?」

思わず何なんだこの茶番はと呆れる。
そんなものに参加するわけもない。
ほら、

「嫌よー」

やっぱり。
クローウィは眉を寄せて困ったように断る。

「いいや!やってもらう。賭けの内容は君との一夜で!」

あ、馬鹿が居る。
余計にやる理由が無い。
覚めた目で見ていると男がムムムという顔をしてこちらに顔を向ける。

「なら相手は君で良い!掛けはさっきので」

「お断りします」

「な!」

いや、何で驚くの?
普通にクローウィを売るような真似なんてするわけないのに。

「はあ、やってらんない。クローウィさん行きましょう」

「ええ〜」

歩き出すとグイッと掴まれて痛みに眉をひそめる。
後ろを見ると今の男が鼻息荒く言い募ってくる。

「君は関係ないだろ!出しゃばってくるな!」

関係ないわけないのに。
痛みを隠さず顔に出しているとクローウィがステッキを男の鼻先に指す。

「臭くなあれ〜」

ほわわん、という効果音と共に突如男から激しい異臭が発生した。
鼻がもげる。
鼻を摘んで男から離れようと手を振りかぶって腕を離し、離れる。
集まっていた客達も一斉に離れる。
なんの匂いかと言われても分からないが、恐らくホテルから持ち込みNGの匂いかと思われる。
嗅いだことが無いから例えでしか分からないが。
多分、そんな耐えられない匂いなんだと思う。
クローウィの芸当はいつも思うのだが、悪戯目的レベルが多い。

「魔女屋。おれの邪魔をしやがって」

(なんの事?)

突然ローがクローウィに話しかけた内容に頭上からハテナが飛ぶ。
何の邪魔をしたのだろうか。
ローは只立って見物していただけだろうに。
しかし、クローウィは内容を訝しげに聞かず、クスクスと笑う。

「早い者勝ちよー」

二人の内容がリーシャに手を出した男による制裁をしようとしていたという事を知らないまま、この日はすっかり夢を見る程寝入ったのだった。


戻る【その後の娯楽(2)】