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「#エロ」のBL小説を読む
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ローと出会った島がなんと言う島かさえ知らなかったので、どれほどこの船が前へ進んだのかは知らなかった。
なのでグランドラインの半分と言われてもよく分からない。
そもそもグランドラインとは何だろうという疑問からだ。
此処は地球ではないというのは何となく理解している。
食べ物も文化も全く未知な物ばかりだし、海軍という警察の様な組織からして色々とちぐはぐな所がある。
海にいる生き物も知らないし、地図を見ても全く見たことのない地形や島。

「シャボンディ諸島……」

着いた島の名前も全く聞き覚えのない。

「リーシャちゃあん、この島、遊園地があるんですってえ。後で一緒に行きましょお〜」

クローウィの嬉しそうな声に取り敢えず頷いておく。
行かないと言って彼女の気が落ちてコンディションを乱さないように。
彼女が落ち込むとこちらの心に痛く刺さるのだ。
加えて船員達の落ち込ませたぞ、なんて視線も煩わしい。
クローウィは美人なので落ち込ませると周りもテンションが悪くなると学んだ。
そして、船員達、覚えておけよと恨みを込めて思念を送る。
船が順調に進んだとベポが意気揚々と語っていたのでそうらしい。
クローウィも島が見えてくると興奮した様子で「あれがシャボンディ諸島ねー。何か飛んでるわああ」と語尾が一オクターブ上がった気がした。
船員達も徐々に見えてくる島に心を踊らせている。
あちこちで扉の開く音や声が聞こえてくるので騒がしくなってきた。
そろそろ中に入ろうかと踵を返すとローが出てくるタイミングにはち合わせてしまう。
ノートを寄越してきたので無心で受け取ると直ぐに部屋へ移動。
そのままノートを開くといつもよりも短い文字があった。
内容は今から行く島に着いての注意事項だったので読まなくては、と嘗(かつ)てない程真剣に読む。
島には人浚(さら)いと賞金狩りの人間がウヨウヨ居る。
ヒューマンオークションに行く。
島にはどんな事があるか分からないから気持ちを引き締めるようにと書かれていた。
そして、最後にクローウィから離れるなと書いてあったので溜息を付く。
クローウィは賞金首だ。
と言う事は共に居れば危険がやってくるのは目に見えている筈。
なのに、一緒に行動させようと思うローの気持ちがとんと不明である。
ムカムカしてくる胃に胃薬を飲まなければ、と嘆息。
ムカついて暴れないリーシャはとても良い人間だろう。
自分のモチベーションを上げる為に自身を褒めた。
色々辛い。




シャボンディ諸島に着くと島に浮かんでいた何かが分かった。
それは巨大なシャボン玉だったのだ。
クローウィは幻想的ねえ、とゆるゆるな口調で言う。
ローはそれを気にせずシャボン玉にも目もくれずに歩いている。
今回の人員はシャチ、ベポ、ペンギン、ロー、クローウィ、リーシャ、後は少しの船員達数名。
グランドラインを半分来た記念に降りたいという希望者が多かった。
見張りを残しての人数は少し所帯が多い。
ローは途中の船員の一人の報告にニヤリと笑みを浮かべていた。

「この島に俺を含めて七人のルーキーが集まってるらしい」

その言葉に周りがざわつく。
何がざわつく理由なのか全く話しに付いていけないので流しながら景色を見た。

「リーシャちゃん。ルーキーって言うのはねえ、船長さんみたいな億越えの海賊達の事を言うの〜」

「最悪じゃないですか。この島。火の海になりません?」

極悪人達の集まる島に自分は降りてしまったのかと歩いている今を後悔した。
どうして、誰も彼も普通に歩き続けているのだと頭が痛くなる。

「天竜人にも気を付けろ」

ローは最後の忠告とばかりにこちらを目視して言う。
天竜人って何だろう。
クローウィがその疑問の気持ちに気付いたのかまたまた説明してくれる。
天竜人とは世界政府を設立した王達。
その末裔が今の世界政府を動かせる唯一の存在で、逆らって何かをしたりすると海軍の大将がやってくるらしい。
らしいらしいと、そんな感想しか抱けない。
海軍の大将って何だ、と新たな疑問が出る。

「大将って言うのはねえ、七武海の七人を三分割した一つ分の力を持つ、こわあいこわあい人生で出来れば会いたくない男性達の事よお」

「三分割?」

「……クローウィ。お前の説明は適当過ぎるぞ」

ベポが突っ込んだ。



ロー達と別行動になると遊園地へと向かった。
その途中、一つの酒場が爆発したので驚く。

「ここ、無法地帯じゃないのにい」

と言うが現に爆発しているので無法地帯という事は関係ないだろう。
爆発は周りの人間にも驚きの事だったらしく騒いでいる。

「あらあ?」

クローウィがのほほ〜んとした声で向こう側を見ているのでどうしたのだろうと思っていると何かかが煙の中から出てきた。
それは何度も回転して外へ出る。
視界が捉えたその姿はカンフー風の男でポーズも変な骨格をしている手も普通そうではない。
何かを叫んだ後にもう一人が崩れた建物の瓦礫を踏み越えて現れる。

「やだあ、三億越えよお。初めてこんな大物達を一同に見たわー」

怖がっているのか、興奮しているのかイマイチ分からないクローウィの反応に赤い髪を逆立てた男を見る。
海賊のルーキーというのはあの人達の事なのか、と観戦していると今まさに戦いが始まろうとしていた。

「おい、魔女も居るぞ」

周りの人達がコソコソとクローウィに注目し始めた。

「美人じゃねェか!……話しかけても平気かな」

やはり目立つクローウィは賞金首を差し引いても美女だ。
下心のある男達の視線を一心に受けている。
自分一人で行動した方が遙かに効率的だと頭に浮かぶ。
けれど、おっとりしている彼女を少し放っておくと変な物を引き寄せそうで不安だ。
少なからず情が湧いているのだと実感。
溜息を飲み込んでいるとユースタス・キッドの視線がこちらにあるような気がした。
その鋭利な目にゾッとする。
早くここを去ろうとクローウィに足すと彼女はそうねえ、と頷き共に移動すると声を掛けられて内心げっそり。
精神的な何かが削られていく。

「声掛けられちゃったわ〜」

「聞こえなかったフリしましょう」

提案するとクローウィはそうねー、と言ってまた共に歩みを進める。
しかし、ユースタス・キッドは見逃してくれないようだ。

「呼んだのに無視すんじゃねェ!聞こえてんだろ女!」

女、と呼んでいる時点でクローウィだけに絞られない事を彼は気付いているのだろうか。
クローウィを呼びたければ特徴を言えば良いのに、わざわざ隙を作る真似をする彼の頭の要領に辟易。
クローウィは困ったようにこちらを見てから「面倒ねえ、焼いちゃおうかしらあ」と言う。
真に困っているのだと分かった発言にそれはヤバいんじゃないかと口元をヒクリとさせる。
三億と言う相場が賞金額として高額なのはリーシャでも分かるのだ。
そんな男に何かをした暁(あかつき)にはどんな報復が待っているか。
痛い想像に嫌悪と寒気がした。
二人で困っているとユースタス・キッドがこちらに近付いてきてクローウィをジロジロと不躾な視線で見る。
何ともいかがわしい。
クローウィの身体を見るだけでも男の恨みを買っているだろう。
かく言うリーシャもとても失礼な男だと海賊に対する印象が更に低くなった。
ローの事や海賊の印象は初めから底辺だが、世の中には海賊が御満と居るから、まだ決めつけては駄目だと言い聞かせていた。

「良い女だなてめェ」

けれど、今の件で殆どの印象が地に落ちると冷たい目をする事しか出来ない。

「何だ、ちんちくりん」

「……!?」

思わずショックを受けてしまった。
今まで少ししか言われなかった平凡さを確定されて言われてしまった。

「リーシャちゃんを悪く言うなんてえ、お仕置きよお」

放心している間にクローウィがステッキを取り出して一振りする。

「えーい」

踏ん張っている感じが全くしないのは仕様だ。

「何だ?」

ユースタス・キッドはクローウィがステッキを振るのを怪訝に見てから己の異変に気が付く。
とても小さな異変、けれどそれは本人的にはあまり嬉しくないだろう。

「タンポポちゃん、咲いて〜」

最初は蕾(つぼみ)がキッドのお尻に出てきて、次は開花した。

「…………なんだこれ」

「お仕置きよお。行きましょうリーシャちゃあん」

クローウィは颯爽とほうきを出して跨がるとこちらに来て乗せてくる。
キッドはこちらを見上げてなにか言っていたが、飛び始めた状態のまま上に上がっていくとその声は小さくなっていく。
やがて、進み出すほうきに乗ってこの場を去った。


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