×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

またもや険悪な雰囲気が食堂に立ちこめていた。
クローウィはいつものようにのほほんとしているが、その隣に居るリーシャが向こう側に居るローを睨みつけている。
そのローは何食わぬ顔でコーヒーを飲んでいるので状況が全く掴めない。

「おい、一体二人の間に何があったんだ?」

「前は顔も見たくないって感じだったのに、今は噛みつきそうだぞ」

「てか、船長の対応がクール過ぎて痺れるなー」

「あ、それ分かる!」

段々違う方向に話題が盛り上がるのをリーシャも聞いていたが、訂正なんてする筈もない。
相手をずーっと睨み続けながら作業をする。
今はクローウィと共に折り紙を折っているのだが、久々なので難しい。
特にお国柄が出る鶴はとても迷う。
どこをどう折れば良いのかすっかり忘れてしまった。

「うーん、私は鶴の折り方知らないからあ、出来なあい」

クローウィは手先は器用みたいなのだが、どうにも難解だから仕方がない。
降参の意で黒いマントが揺れてポトッと出来掛けの何かが転がる。
それを見ながら手元に視線をやるとグシャグシャな折り目が付いた物が目に入った。

「私も出来ません……無念です」

折りたかったなあ、と馳せると背中に視線が突き刺さる。
何だろうと向く前にローの低いテノールの声が聞こえて不機嫌になっていく。

「誰か鶴を折れる奴いるか」

「おれ、多分分かります」

誰かが立ち上がりこちらに来る気配に向くとペンギンが居た。
彼は無表情だ。
本当に折れるのかと信じ切れなくて邪推する。

「いいです。結構です。貴方の教えを乞う程の事じゃありませんので」

つん、とそっぽを向くとペンギンがグシャグシャなリーシャの折り紙を取っていくので益々機嫌は下がる。
周りが固唾を呑んでこちらを見ている中、ペンギンはサクッと鶴を折った。

「出来た」

ペンギンはこちらに鶴を渡してくる。
しかし、もうその鶴は他人の物になった。
いらない、と断るとペンギンは肩を竦めて何処かへ向かう。
ローの目の前に立つとグシャグシャな鶴、ヨレヨレな折り紙を彼に渡す。

「船長、如何(いかが)です?いくらで買います?」

「「「金取んのかー!?」」」

「悪質だ!」

「ゼニ男だ!」

ローに取引を持ちかけるペンギンの手腕に皆が反応する。
そんな時、ローが徐にポケットを漁って、ねじ込んであった小銭をカチャンとテーブルに置く。

「今の手持ちはこんだけだ」

「ふむ、しめて二百三ベリーですか」

「「「払うのか船長ー!?」」」

ただの紙に払うには払いすぎだ。
船員達は突っ込みながら思った。
リーシャは既にその鶴には何の思い入れもないからどうなっても良かった。
価値のないただのグシャグシャに成り果てた紙だどうせ。

「いいなあ、私も欲しいわー」

「クローウィさんまで欲しがってんぞ!」

「ヤバい。クローウィさんと話せる機会を生む金の鶴に見えてきた」

「おれも……!」

ごくり、と生唾を飲み込む船員にアホらしいと一蹴した。



夜になるとクローウィと二人でお風呂に入った。
この時間は女性用となっている。
クローウィが来る前は自分一人だったのでローの部屋のシャワールームを使っていたのでわざわざ嫌な相手の部屋に行かなくても良くなって嬉しい。
今はもっと嫌いになったから有り難い。

「リーシャちゃーん」

後ろにハートマークが付きそうなテンションで話しかけてくるクローウィ。
トロッとした話し方が拍車を掛ける。
彼女はリーシャに背中を洗ってもらいたいと最近言うようになった。
こっちからすると困惑なのだが、どうしてもと頼まれて二人切りなので承諾したのだが、最近はテンプレートとなっている。
おまけに洗った後はリーシャの背中を洗うと言われては断っていた。
いつか流されて洗ってもらうことになるかもしれない未来に苦笑。
ワシャワシャと自分の方を洗っているとクローウィが先にお湯に浸かるわ、と告げて椅子から立ち上がる。
いつ見ても綺麗な身体と胸だ。
あんなふくよかな体型が欲しい。
夢の中なのだから自分の願った体型にくらいならないものかと念じてみたがなる訳もなかった。
とほほ、としながら流すとクローウィの居る湯船へ入る。
全然広いので密着なんて事もないのだが、クローウィがゆっくりと寄ってくるのだ。
その、のほほんとした動きと言ったら何かの動物を思い起こす。
ワニなんてぴったりだ。

「ねーえ、私達ってえ、ガールズトークやった事ないでしょお?」

「ええ……でも話す事なんてないですけど」

クローウィの唐突の話題振りにも最近対応出来る様になってきた。
彼女は天然であるが抜けてはないない疑似天然だ。
はっきりと思った訳ではなく、何となくそうかなあ、といった感じであった。
それを口に出さないのは彼女の身の上も掘り下げてしまうんじゃないかという理由だ。
そんな事を聞くほど親しくもないし、彼女ははぐらかそうと思えば簡単にはぐらかせてしまうだろう。
ジャアーと音がするマーライオンではない何かの彫刻を見ながら思案。
しかし、クローウィは諦めていないようで「あるわよお」と確信めいたことを言い出す。
クローウィにはガールズトークの話題が脳裏にあるのかもしれないと耳を傾ける。

「シャチくんは可愛いでしょお、ペンギンくんも可愛いでしょお、あとねえ、他の子達も全員可愛いわあ」

「それはクローウィさんの主観では。私は全くそうは思いません」

ピシャリと言うとクローウィはホッコリした顔で言う。

「でもお、船長さんがーいっちばん可愛いわあ〜」

頬がお湯で暖められて色付いている。
凄い色気であると羨ましく思う。

「同意出来ません」

あの生物と同じ種族というだけでも嫌なのに、可愛い等有り得ない。
明日は天変地異だ、有り得ない。
大切な事なので二回言う。

「えー?それはあ、船長さんの嫌な所々しか〜見てないからよお、きっとお」

「良い部分なんてあの男には無いですね」

断言するとクローウィはウッソリと笑みを浮かべた。

「聞いたんだけどお……悪魔の実を食べさせられちゃったんでしょー?その時助けに行ったらしいしい。後お、私と会った時も〜彼はリーシャちゃんをお庇ってたわよねえ」

「あんなの、今までやってきた事に比べたら……チャラですよチャラっ」

ムッとなりながら心臓を舐められたり足を舐めたり首を噛まれたりエトセトラ。
やはり、チャラだ。
逆上(のぼ)せてしまうとクローウィに言って早足でお湯から出た。


戻る【21】