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クローウィの案内で付いたのは煌びやかで厳かな雰囲気の屋敷だった。
周りの地形は何とも寂れているのに違和感が有りまくる。
そこだけ別次元と言われても納得してしまう感じだ。

「此処よ。全く。怒られるわ、私」

「命が取られていないだけマシと思え。本来ならお前なんてあそこに置き去りだ」

ローが冷たく伝えるとクローウィはまた溜め息を付いて全く緊張感の無い様子で今度はこちらを見た。
その視線に熱さを感じたのは気のせいだろうか。

「そこの人、さっきはごめんなさいねえ。つい、可愛かったから襲っちゃっただけなのお」

「は、はあ………」

困惑気味に答えることしか出来ない。
答えると魔女はペロリと舌を出して唇を舐めた。
色気のある仕草に言い知れぬ感覚が身体を駆ける。

「うああ!もう、痛いぃ!」

「変な目で見るな。虫酸が走る。とっとと門を開けさせろ魔女屋」

心臓を握ったらしいローの言葉に彼女はふてくされながら渋々扉を開くように相手に伝える。
すると、相手の男の声は焦っていて『拒否』を示す。
ローはまどろっこしい会話にじれたのか貸せ、と受話器を横取りした。

「開けなければ目の前にある門を壊しててめェの家を今すぐ襲う。それをされたくなかったら素直に開ける事だ。十秒待ってやる。もし開けなかったら泣きを見るのはどっちだろうな」

凄くストレートな脅しに男は震える声で分かった、開ける、と言う。
何とスマートな交渉の仕方だろうかと皮肉を浮かべる。
だから、こいつは嫌いなのだと改めて嫌悪した。
やがて要求した通りに開けられた扉へと進む。
クローウィは「あの単細胞は本当に臆病ねえ」と呑気に呟く。

「私を雇ったのも二千万ベリーだったからなのよお?笑っちゃう〜」

「でもお前は大人しく雇われてたろ」

ペンギンが聞く。
それにクローウィは当然、と答える。

「お金が欲しかったんだもの。どんな手を使ってもお金は必要になるわあ」

「だとしても襲う相手を見誤ったな」

ローがクローウィに言うと彼女はそうねえ、と掴み所のない台詞を言ってからこちらを向いた。

「でもお、とっても素敵な子に出会ったからラッキーって感じ〜」

意味深な視線をまた感じて苦笑を浮かべるしかない。
賞金首には変な人しか居ないのだろうか。

「いたああい!もう、いきなり何すんのよう」

「さっき言った筈だ。虫酸が走った」

憎めない感じの女性で美人なのに色々残念だ。
屋敷の前に行くと扉が開いた。
勝手に開いた現象に驚いているとクローウィが私の魔法よ、と言うので何だ、と安堵。

「その怯えた顔も可愛いわあ」

「あ、ありがとうございます?」

褒められたのか何なのか不明だが今までの最悪な扱いという経験のせいで褒められるという免疫がない。
同姓から褒められると少し嬉しい。

「入るぞ」

クローウィを急かしてから屋敷の中に入ると無駄にキラキラしている装飾品の数々が出迎える。
家主は隠れているのか待っているのか。
単細胞やら臆病な先程の言葉に隠れている可能性が高い。

「あらあ、無駄な足掻きをしちゃって〜。見苦しいわねえ」

雇い主に対して辛辣だ。

「出迎えも出来ねェ癖におれらを襲うように言ったのかよ。がっかりだなァ」

シャチがつまらなさそうに言う。
カツンカツンと靴の音が複数響く。
自分達しか居ない錯覚に陥りそうだ。

「おい、魔女屋。雇い主の部屋は此処で合ってんのか」

「ええ。でも気配がしないわ。きっともぬけの殻ね〜。まあ、あの男なら仕方ないわあ。この家にある金目の物でも貰っていこうかしらあ」

嬉しそうな声音に内心「自由な人だ……」と羨ましくなる。
彼女のような能力があれば自分も自由に生きられるのだろうか。

「おい、誰がいつ解放すると言った?」

「「え?」」

クローウィとリーシャの声が重なる。
もう何もする事はないだろう女になんと無体な事を。

「そんな、もうクローウィさんは、敵じゃないのに」

確かに攻撃されたが、何度も心臓を痛めつけられている所を見たら同情が湧いてしまった。
まるで前の自分のようだ。
ローはやはり残忍なのだと認識してしまう。
どんな悪行も男の前では忽(たちま)ち霞む。

「リーシャ」

「気安く名前を呼ぶな!」

ローが何か言おうとして自身の名を声にされた。
それに嫌悪が生まれる。

「結局どいつもこいつも一緒!そんなに犯罪を犯したいなら好きにすれば!?……私はもう嫌!解放して!」

息荒く言い切れば辺りは静かになって頭も冷えていく。
しかし、言いたい事だから撤回なんてしない。
クローウィもローも同じ人間なのだ。
リーシャも皆と同じように解放されたいだけなのだ。

「行く宛てはあるのか」

「は?何言って」

ローの予想外の言葉にドキッとする。

「ワンピースも知らないお前が、この世界で生きていける宛てはあるのか」

「っ、ワンピースワンピースって!そんなに重要なの!一人くらい知らなくったて可笑しくない!自分達が知ってるからって押し付けないで!それに、それとこれとは別よ!」

今日は怒ってばかりだ。
こんな自分が醜くて嫌になる。
本当はこんな気持ちなんて抱きたくない。
けれど、目の前の男が嫌悪、憎しみ、悲しみ、ありとあらゆる感情を目覚めさせたのだ。


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