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降りた島はログポースと呼ばれる仕組みが分からないまるで方位磁石のような形をした物が溜まるまで滞在していなければならないらしい。
知識を知らない自分にペンギンが丁寧に教えてくれたのだが未だによく理解出来ていなかった。
取り敢えず今回の島は三日間滞在するとベポから聞いたので暇な空き時間をどう過ごそうかと宛がわれた部屋で悩んでいたらベポが一緒に買い物に行こうと誘ってくれたので二つ返事をする。
服を選んで着替えると扉を出てすぐ横にローがいた。
驚いて口を開けないでいるとベポがやって来て行こうと進む。
その中でローも付いてきたので白熊にこそっと何故ローが居るのだと尋ねると最初から行動を共にする予定だったからと初耳な事を聞かされ口を曲げる。
付いてくるなら行かなければ良かった。
後悔していると前に居るローが立ち止まりベポも立ち止まったので上にある店の看板を見上げるとそこは雑貨屋だったのでここか、と中にある商品をちらりと見る。
彼もベポも中に進み同じように足を動かす。
かなり盛んな島らしく雑貨の豊富さに感嘆の声を小さく洩らした。

「キャプテン、本当にこのお金使っていいのか?」

そう言うベポに死の外科医はああ、と短く返事を返す。
死の外科医とは二つ名らしく海軍によって付けられると聞いた。
本人にこれ程ぴったりな呼び名が存在しようかと妙に納得出来ると内心思った。
了解を得るとベポとリーシャは買い物カゴを手にする。
必要なものを買い込んでいくと白熊の彼が唐突に変な事を言い出した。

「リーシャはキャプテンに何をあげるの?」

「え、何をあげる?意味が分かりません」

「意味?って………キャプテンの誕生日の事だけど??」

「誕生日……………?」

ベポとそこまで話して「知らなかったんだ?」と言われとても嫌な気分になった。
知らなくても何の損も特もない。
ローの生まれた日なら寧ろ最悪な日。
しかも明日と言われ、明日は絶対宴なんかには参加しないと決めた。
するものか。
ペンギンが騒ぎを起こさないでくれと頼んできたのはそういう理由だったのかとイラつく自分の荒くれた感情を感じながら買い物を済ませると残りの時間をベポとの会話で埋める。
因みにローは隣の本屋で医学書を読んでいるという。

「キャプテンが渡したハンドクリーム、ベルガモットの香りなんだ。知ってた?」

「ベルガモット、とは?」

「うんとね、柑橘類のものだった気がするけど………キャプテンも好きな香りだからいつも香水はベルガモットなんだ」

「え、じゃあ私とあの人の纏う香りが一緒という、事ですか?」

「あ、で、でもっ、ハンドクリームと香水は利用の意図が違うから少し香りが違うんだぞ!」

ベポが慌てているのが分かりジト目になる。
今すぐ手を洗い流したくなった。



翌日、朝から船員達が珍しく停泊中の船に居てそわそわと落ち着きがなかった。
きっとローの誕生日を早く祝いたくて仕方がないのだろう。
そんな浮き足立った空気が嫌になり早々に黙って船を降りた。
きっと見張りには姿を見られているかもしれないがどうでも良かったので足早に町へ向かう。
人通りの少ない早朝にゆったりと整理された道を進んでいると突然数人の男達に囲まれる。
眉を寄せて見ているとリーダーらしき男に聞かれた。

「お前トラファルガー・ローの女だろ」

「はい………?、違いますけど」

聞き間違えならどんなに良かったかと目眩を感じた。
どうやら一緒にいている所を見られていたらしく嘘をつくなと言われ返答に困る。
嘘をついていないのにと弁解しても理解してもらえるような人達には見えない。
そう考えている間に彼らに捕らえられ袋に詰められた。
ジタバタと暴れるが早業の如く口に布を入れられ叫ぶ事は叶わない。
悔しくて涙が零れた。
その時、不意に昨日のベポとの会話が甦る。
ローの誕生日をリーシャが知らなかったと知るや彼は、それじゃあ半分にして渡そうと案を述べてきた。

「おれ、キャプテンに魚をあげようと思ってんだ。だから一緒に手伝ってくれよ」

「私は、あげるつもりはない」

「そんな事言わないでくれ。せっかくリーシャが来てから半年間ずっと一緒に航海してるんだ。このグランドラインで出会える確率ってのは奇跡に近いんだぞ」

「き、せき、ですか……」

あの時のベポはワンピースの事を語る時と同じくらい幸せそうな表情をしていた。
それが頭に残って離れなくて。
何もこんな非常事態の時にと涙をまた一つ零した。



***



LAW-side


甲板ががやがやと騒がしい事に気付いたのは起きて水を飲もうと廊下に出た時だった。
まるで今から宴でも開こうかとしている声に首を傾げていると通った彼女の部屋が目に入り気配が無い事に気付き再び不思議に思う。
靴音を響かせながら甲板に向かえばガチャリと扉を開けると陽の光りが視界を一瞬覆い次に賑わう光景が広がる。

「あ!船長〜!!」

「船長お早うございます!」

「せーのっ」

「「誕生日おめでとうございまーす!!」」

パンパンッとクラッカーが耳に響きテープや紙吹雪きが頭上を舞い身体に落ちてきて、やっと自分の生まれた日なのだと初めて気付いた。
そして無意識に周りを見回し女を探す。
しかし、見当たらなくて後ろの方に居るのかと思ったがやはり居なかったので眉を寄せた。
ベポにリーシャは、と聞くと困ったように町に降りたみたいと言い舌打ちする。
もし誰かに襲われたらどうするんだと感情が沸々と沸く。
すると見張りが慌てて何かを叫びローに紙を渡してきた。

「リーシャが、拐われた!」

「!……………くそっ!」

「ええええええ!!?」

「あ!キャプテン!?」

全員が驚いている間にローは刀を持って船から飛び降りた。
静止する声が聞こえたがなりふり構ってなどいられないと走る。
この感覚は半年前の彼女の自殺未遂の時を思い出す。
あの時も確か焦燥が胸を焦がした。
悔しさと後悔が交差する中、人質にはもってこいの人間だと認めざるおえない。
紙には町の東にある倉庫に来いと書かれていた。
汗が額に滲むのも構わず走り続けた。



***



その見下した笑みが恐怖をじくじくと蝕んでいく。

「お前の男は二億の首なんだ、本当に自覚してんのか?」

「いや、自覚があんなら一人でウロウロしねーだろ!」

ケラケラと笑われ泣くしかない。

「なァ、悪魔の実食わしてみねェ?」

「そりゃいいな!よし食わせろ!」

悪魔の実という単語にサッと顔が蒼白になるのを感じた。
嫌だ、自分は普通の人間でいたい。
首を振ると男達は笑いリーシャの頭を固定し宝箱のようなものから奇妙な食べ物を取り出し口に押し込む。
必死にもがくがあまりのマズさにえずく。
その反動で欠片程の量を喉に流してしまう。

「い"や"あ"あ"あ"あ"!!」

泣き叫ぶと倉庫の扉がドゴォン!と壊れる。
唖然とする賞金稼ぎと涙で顔がぐちゃぐちゃな自分。

「死にてェ奴はどいつだ?」

例えるならば殺気を携える虎のような男。
その威圧感に押され男達は一言も口を開かず固まる。
そして、その目が一人の女を捉えると目の色が変わり口許が歪む。

「ただで済むと思うなよ………"ROOM"」

青白いサークルが取り囲むと男達は一瞬で一蹴されカタは直ぐについた。
泡を吹いて気絶した彼等を縫い、こちらにやってきたローは近くに転がった悪魔の実を見て焦り顔で近寄ってくる。
悪魔の実を食べたのかと聞かれ嗚咽を漏らしながら必死に頷くと奥歯を噛み締める音が前から聞こえた。

「あァ、くそ!」

悔しげに呟かれた声音にしゃくりをあげながら顔を上げる。

「わ、わ、わた、しっ、」

「嗚呼」

「人じゃ、な"くな"っち"ゃった………う"ぅ………!どうしよおおお!!」

わんわんと子供のように泣きじゃくり沢山声を上げ、その間彼はDEADと彫られた手とは思えない程優しくリーシャの頭や背中を撫で続けてくれた。


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