×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

朝になって起きると手がしっとりとしていて乾燥していなかったことに驚いた。
慌ててハンドクリームを見ると中身が減っていたので暫し放心してしまいローから貰ったものに手を付けてしまったのかと落ち込んだ。
そもそも昨夜は使った記憶もなくいつの間にか使われていたことに疑問が過る。
一つの可能性がふつふつと沸き上がり顔を歪めると足音荒く船長室と言われる場所に向かう。
その途中でベポと会うが話している暇などないので通り過ぎると彼がもう一度呼び止める。

「ハンドクリームっ、気に入ってくれた?」

「え?」

「昨日の夜にこっそりリーシャの手に塗ったんだ。手が荒れてたから」

「ベポさんが?じゃあトラファルガー・ローさんじゃないんだ、犯人」

「う、うん」

それなら別に構わないと安堵の息をつくリーシャは気持ちが落ち着き本来の予定していたことをしようと踵を返した。
それを見送った白熊は安堵の息を洩らす。

「ふううう〜、バレたら絶対リーシャ怒るもんな」

ローに頼まれたから自分がした等と嘘をついたベポは改めて嘘も必要なのだと思った。



可笑しな形、否、生物を見ながらリーシャは口許をヒクつかせていた。
やはりこれはどこから見ても電話には見えず手に取るのには躊躇われる。
何回か誰かが電話しているのを見たことはあるし自身も触ったことがある。
その異様な形に。
そろそろと手を動かし電話口である場所に耳を当てて予めこっそり調べておいた海軍の電話番号にかける。
この行為は初めてではなく何回か目のものだ。
それなのにローはいとも簡単に海軍の船を撒くか沈めてしまうのでこうしてかけなければいけなかった。
電話がプルプル、と声を発し三コールでこちら海軍本部、と声が聞こえる。
助けを求めようと声を出した途端にプチリと通話音が切れ音沙汰なしとなった。
突然の事に首を傾げていると後で物音がしてビクリとなるとゆっくり振り返る。

「!…………」

「もうすぐ陸に着く。準備しておけ」

ロー本人だった。
彼は何もなかったかのように振る舞いそう告げると去っていく。
何故海軍に通報していると分かっていて何も問わないのだろうと疑問が浮かぶ。
しかし、リーシャにとっては気にする必要もない事なので気にしない事にした。
されて当然なことをしたのは向こうなのだから。
この船に乗ってから自分の神経が少なからず図太くなった気がするのはきっと気のせいだと思いたいが、自覚せざるおえないのは海賊船の船長にあんな態度が取れているから。
こんなサバサバした性格じゃなかったのにいつの間にか色々と慣れてしまったのだろう。
そもそも何時になったら元の世界に戻れるのだろうか。
もう夢とは思えない痛みや悩み、感情がリーシャをこの世界に居ても良いかもしれないと感じさせている事に身体がぶるりと震える。
良い訳がない、と何度も自分に言い聞かせるが数時間経てばいつもの様に昼食を食べて船員達と町に繰り出すのだろうとぼんやりと思った。



ローが言っていた通り町に着き、島の人間達から見えない場所に停泊した潜水艦はガコンと音を立て扉を開いた。
見張りを残して船長を筆頭にツナギの集団と一人の女が島に降り立つ。
ベポの近くをいつも歩くのだがローとの距離が近い為、毎回憂鬱な気分になりながら歩く。
そんな気持ちで周りを見回しているとペンギンが近付いてきて耳打ちしてきた。

「今日は海軍の駐屯所に行くのは遠慮してくれないか」

「それに従う理由はないので拒否します」

「そう言わずに…………な?」

「何か重要な理由でも?」

「重要な事だな」

それ以降ペンギンは話さなくて、重要なことの内容を言わなかった。
首を傾げるが自分には対して関係のないことなのだろうと自己処理してベポについていく。
たまに前からチラチラと視線を感じたが誰だか分かっていたので知らないフリをした。
数分程歩いているとガラの悪い男達がずらずらとハートの海賊団を取り囲み一人がニタリと笑みを浮かべ紙切れを見てはローの顔を見比べていて何をしているのかは一目瞭然。
前にシャチ達から海賊が政府から危険人物と認定された人間はその首に懸賞金がかけられるのだという。
ローの懸賞金は一億四千万だと聞いて驚いたのを思い出す。
そんな額は宝くじでしか聞いた事がない。
どういうシステムでその金額なのかは知らないが何度も助けを求めた海兵達が男一人にあっさりと負けてしまう理由を察したものだ。
それと同時にローより強い人間は居ないのかと調べた。
だが、その強い人は海軍本部という場所に集まっているらしいので見込みがなかったから落ち込んだ。
だからといって、諦めはしない。
と誓ったのは良いがなかなか隙がないので上陸した時にしか行動に移せなかった。
今がそのチャンスな訳だ。
今は賞金狩りと呼ばれる者達に囲まれていてそんな余裕は一つもありそうにないが。
そうして思考に浸っていると倒し終わったのかシャチやペンギンがパンパンと服の砂埃を払っていた。


戻る【07】