07
今日もベポと会うためにいつもの喫茶店で待っていた。
──カラン
ベポが来たと思い扉の方を見たが入って来たのは白熊ではなくモコモコの帽子を被り目の下に隈がある男の人だった。
その人はリーシャと目が合うとコツコツと靴を響かせてこちらに歩いてくる。
「お前がメイス屋か?」
「(メイス屋?)えっと……そうですけど、どちらさまでしょうか?」
「ベポが来られなくなっちまったからそれを伝えにきた。俺はトラファルガー・ロー」
彼がそう名乗るとリーシャの隣に座っていた男性がいきなりコーヒーを吹き出す。
吹き出した人は顔を真っ青にしてお金を払った後脱兎のごとく走り去っていった。
「?……あっ、申し遅れました。私はメイス・リーシャというものです」
自己紹介をしつつ顔を上げるとローが驚いた顔をしていた。
「俺の名を聞いたことはないか」
そう言われリーシャは考えたが記憶の中にトラファルガー・ローという名前はなかった。
「すいません、私がベポさんから聞いているのはキャプテンさん、シャチさん、ペンギンさんという人達が殆(ほとん)どなんです……」
どうやらベポはローのことをキャプテンとしか呼んでいないようだ。
チラッと彼女を見たら何故かそわそわしていて何か言いたそうにしていた。
「どうかしたか?」
そう尋ねればと彼女は「えっと、あの」と口ごもっている。
もしかして今になってローの顔を思いだしたのだろうか。
動揺してるのかもしれないと思いながら彼女の言葉を待つ。
「あの……体、大丈夫ですか?」
「……は?」
この言葉は予想外だった。
思わず間の抜けた声が出てしまうロー。
「あっ!いえ、あの……隈が出来ているので、体調が悪いのかなと思いまして……余計なお世話でしたよね」
失言に気づき慌てて謝る。
「………」
「あの……トラファルガーさん……?」
「……クッ……ククッ……」
さっきまで反応しなかった彼がいきなり笑いだしたのでびっくりした。
その頃、外から中を見ていたシャチ達は自分達の船長が笑っているのを見て開いた口が塞がらなかった。
「お……おい、俺船長が女相手にあんなに笑ってんの初めて見たんだけど……」
「俺もだ……」
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