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「また名前を、呼ばせてくれる、んですか……」


私が震える唇で聞く。




「あァ。もちろんだ」



私の言葉に頭を優しく撫でる彼。





「船に、乗ってもいいんです、か」



「無理矢理にでも乗せてやる」



ローさんらしい言葉に私はふっと笑う。





本当は誰かに縋りたくて。

村で仲良くなった友達が死んだ時だってたくさん、たくさん泣きたかった。

怖い人に迫られた時も大声で叫びたかった。

でも私は旅人で、罪人で。


姉が死んだ事実に耐えられなかったから私は存在しない罪を勝手に背負っていた。




そんな私の鎖をローさんは言葉で溶かすように取り払ってくれた。







「ローさん……ありがとございます………ありが、とう、ごめんな、さい……!」






私の言いたい事が伝わったかわからないけれど、フッとローさんが笑ったような気がした。












「今夜は、月が綺麗だな」



たったそれだけの言葉なのに私にとっては特別のように見えた。








ずっと一人で見てきた月をローさんと仰ぎ見ながらスッと目を閉じた。





「はい……とても綺麗です――」











ポタリとこぼれ落ちた涙の雫が月明かりに照らされた海に小さな波紋を描いた。

















泣かない旅人






















お姉ちゃん



私、泣いた分だけ強くなるからね
































































END


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