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過去を語るのは自分にとって、罪を認め受け止めているから。
人は涙もろく、恐怖を感じるのは当たり前。
じゃあ私はいつから何も感じなくなったのだろうか――?
***
リーシャが十二歳になった時だ。
自分の姉は十七歳で既に酒場で働いていた。
別に体を売ることではなく、普通にウエイトレスとして純粋に働いていて、私達の生活は順調だった。
ある日、特別にリーシャも酒場で少し働かせてもらい姉の負担を減らそうと頑張った。
マスターは気のよい人で祖母の古い友人であり、私達の面倒を少しばかり立ててもらっていた。
そんな日に、悲劇は起こった。
――ドゴォン!
扉が乱暴に開け放たれ、銃を持った男達が入ってきた。
海賊だと察知した姉は咄嗟に私をカウンターの下に押し入れる。
「俺達は海賊だァ!」
「ここにあるもん全部持ってこい!」
どう見ても酔っ払っていることがわかった。
マスターも姉もビクビクしながらも言うことを聞く。
「んァ?こいつァ綺麗な女だなァ!」
俺の一人がそう呟くと汚い手で姉の腕を掴む。
「きゃっ……や、やめて下さい!!」
姉は抵抗したが全く効果はなく、マスターが慌てて止めに入った。
「お、お客様困ります。どうかその子を離して……」
――ガゥーン!
マスターが言い終わる前に俺が懐から拳銃を取り出しマスターを打ち抜いた。
「う、ぐっ……!」
マスターは膝をつき、痛みに悶える。
「マ、マスター!……離しください!」
姉は叫ぶと男の腕に噛み付いた。
私はずっと震えながら見ているしかなかった。
「ぐァァ!……このアマっ!!」
男の手が緩んだ隙に姉はマスターに駆け寄る。
しかし、辿り着く前に男が姉を――。
撃った。
私はその光景に瞬きをすることも忘れ、スローモーションのようにゆっくりと倒れていく姉を見る。
叫びたいのに叫べなかった。
助けたい。
手を伸ばしたい。
姉の後ろには拳銃から煙を出し怒りに顔を歪める男。
ドサリ。
はっと気づいて姉を見れば、まだ意識は残っていて、痛みに汗を流しながら私に目で来るなと強く言われる。
もう何も考えたくなくて、頭が真っ白になり私は意識を失った。
あの日に戻れるのなら
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