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ハートの海賊団のクルー達は諦めずにリーシャを誘い続けたが、彼女は一度も首を縦に振る事はなかった。
***
俺達がリーシャも混ぜてトランプをしていた時だった。
「島が見えたぞー!!」
そんな見張りの声が聞こえ、俺達の手がピタリと止まった。
「もう着いちゃったんだね……」
俺がもっといてほしかったのに、というとリーシャは苦笑いしながらそうですね、と言うと上陸の準備をするために自室へ行ってしまった。
「あっという間だったな」
「そうだな」
二人も同じように落ち込んでいるみたいだった。
(ペンギンさんは無表情だからわからないけど)
しばらくすると、リーシャが荷物を持って、戻ってきた。
「今までお世話になりました」
リーシャはふわりと笑いながら頭を下げる。
「っ!……、リーシャっ!」
ベポは頭を上げるのと同時にリーシャに抱き着く。ベポが悲しそうな顔をするとリーシャは優しくベポの頭を撫でた。
「シャチさんとペンギンさんもお元気で。色々とありがとうございました」
「いや、リーシャには俺達も感謝してる」
ペンギンがフッと笑う。
「キャプテン助けてくれてありがとな!」
そして、シャチもニカッと笑う。
二人が言葉をかけるとリーシャはありがとうございます、と言いうと船長室に向かった。
***
今日でリーシャは船から降りる。
ローは自室にずっと篭り、その事実に頭の中がうめつくされていた。
ローはこの2週間、リーシャを船に残れ、と言わなかった。
最終的にどうするのかはリーシャが決めることだからだ。
それにクルー達の勧誘を断っていることも手伝っている。
―――コンコン
ローが考えを巡らせているとふいにノック音が響く。
(リーシャか……)
「入れ」
ローがそう言うと中に入ってきたのは思った通りの人物だった。
「もうすぐ島に着くので、その前に挨拶をと思いまして」
ローの部屋に尋ねてきたリーシャは開口一番にそう言った。
(相変わらず律儀だな……)
ローは内心そう思いながらリーシャを見る。
「短い間でしたが、乗船させていただいてありがとうございました」
リーシャはそういうと、ゆっくりと頭を下げる。
「俺も助けてもらったが、なにもしてねェ。何かできることはあるか?」
そう言うと、リーシャは首を振り、ニコリと笑みを見せた。
「いえ、何も入りません。でも……、次に会った時もまた一緒にお茶をしてほしいです」
リーシャの申し出にローはもちろんだ、と頷く。
それを見たリーシャはありがとうございます、とまた笑うと部屋から出ていった。
パタリと閉まる音にローは自分の心情が沈んでいくのを感じ、自嘲の笑みを浮かべる。
(今更だな……)
改めて自覚した自分の気持ち。
ローはリーシャに惹かれていたと――。
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