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52


ハートの海賊団のクルー達は諦めずにリーシャを誘い続けたが、彼女は一度も首を縦に振る事はなかった。




***





俺達がリーシャも混ぜてトランプをしていた時だった。


「島が見えたぞー!!」

そんな見張りの声が聞こえ、俺達の手がピタリと止まった。


「もう着いちゃったんだね……」

俺がもっといてほしかったのに、というとリーシャは苦笑いしながらそうですね、と言うと上陸の準備をするために自室へ行ってしまった。


「あっという間だったな」


「そうだな」


二人も同じように落ち込んでいるみたいだった。


(ペンギンさんは無表情だからわからないけど)


しばらくすると、リーシャが荷物を持って、戻ってきた。


「今までお世話になりました」


リーシャはふわりと笑いながら頭を下げる。



「っ!……、リーシャっ!」


ベポは頭を上げるのと同時にリーシャに抱き着く。ベポが悲しそうな顔をするとリーシャは優しくベポの頭を撫でた。


「シャチさんとペンギンさんもお元気で。色々とありがとうございました」

「いや、リーシャには俺達も感謝してる」


ペンギンがフッと笑う。


「キャプテン助けてくれてありがとな!」


そして、シャチもニカッと笑う。
二人が言葉をかけるとリーシャはありがとうございます、と言いうと船長室に向かった。




***




今日でリーシャは船から降りる。
ローは自室にずっと篭り、その事実に頭の中がうめつくされていた。
ローはこの2週間、リーシャを船に残れ、と言わなかった。
最終的にどうするのかはリーシャが決めることだからだ。
それにクルー達の勧誘を断っていることも手伝っている。


―――コンコン


ローが考えを巡らせているとふいにノック音が響く。


(リーシャか……)


「入れ」


ローがそう言うと中に入ってきたのは思った通りの人物だった。


「もうすぐ島に着くので、その前に挨拶をと思いまして」


ローの部屋に尋ねてきたリーシャは開口一番にそう言った。


(相変わらず律儀だな……)


ローは内心そう思いながらリーシャを見る。


「短い間でしたが、乗船させていただいてありがとうございました」


リーシャはそういうと、ゆっくりと頭を下げる。


「俺も助けてもらったが、なにもしてねェ。何かできることはあるか?」


そう言うと、リーシャは首を振り、ニコリと笑みを見せた。


「いえ、何も入りません。でも……、次に会った時もまた一緒にお茶をしてほしいです」


リーシャの申し出にローはもちろんだ、と頷く。
それを見たリーシャはありがとうございます、とまた笑うと部屋から出ていった。
パタリと閉まる音にローは自分の心情が沈んでいくのを感じ、自嘲の笑みを浮かべる。



(今更だな……)



改めて自覚した自分の気持ち。
ローはリーシャに惹かれていたと――。


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