敵船に勝ったハートの海賊団はその日の夜、勝利の宴を開いていた。
私はお酒が飲めない為、皆の邪魔にならないようにと思い、甲板に出る。
(今日は全く月が見えないなぁ……)
一人でぼんやりとそう考えていると、静かな空間にカツカツと靴の音が聞こえ、私はその音の人物を想定しながら振り向くと、思ったとおり、無表情なままのローさんが立っていた。
「今日は月が見えないな」
「はい」
私が返事をすると、ローさんはそのままの場所で、言葉を続けた。
「あのままだったら俺は死んでいた」
「悪魔の実の能力はカナヅチになるからですよね」
「あァ」
「大変ですね」
「場合によってはな」
ローさんの最後の言葉で、私達はそれっきり無言のまま、夜の海を眺め続けた。
[ back ] bkm