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それは、なんのまいぶれもなくやって来た。
「敵襲だァ!!」
俺はその声にまじかよ、とうなだれる。
今日は天気も良いし、釣りをしようとしていたところだったからだ。
俺がせっかく釣りが出来ると思ってたのによ!と騒いでいると、後ろから頭を叩かれた。
「いてっ」
「そんな事を言っている暇があるならさっさと準備をしろ」
俺はペンギンの言葉にへいへいと、相槌をうちながら戦闘の準備をした。
***
いざ、戦闘が始まると、ものの数分で片が付いた。もちろんハートの海賊団の圧勝である。
だが、俺達は余裕で勝利した事に浮かれていて、油断していたんだ。
―ガゥーン…
――ガッ
「うァァ!」
―ザパァーン…!
それはあっという間だった。
完全に倒しきれていなかったやつが船長に銃口を向けていて、それを船長が気づくと同時に、船長が相手を蹴り倒すのと引き金を引いた音が響く。
船長はぎりぎりで弾を避けたが、バランスを崩し海へ落ちた。
(やべェ!!)
俺はその事を理解すると慌てて足を踏み出しす。
だが、それより先に俺の横を走り抜けたやつがいて、そいつはそのまま海に飛び込んだ。
「なっ!!」
「浮輪を降ろせ!」
ペンギンの声に俺ははっとし、慌てて船長が落ちた海を見下ろす。
少しすると、ぶくぶくと水面に二つの影が浮上してきた。
「……船長!リーシャ!」
驚く事に先程海に飛び込んだのはリーシャだった。クルー達が二人を引き上げると、周りに集まる。
「船長大丈夫ですか!?」
「リーシャも大丈夫か?」
「私は大丈夫ですよ」
「俺もだ……」
船長の声を聞いて、俺達はほっと胸を撫で下ろした。
「助けられてばかりだな」
船長が彼女を見ながら言うと、リーシャは気にしないで下さい、と微笑んだ。
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