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私の過去をローさんに話した翌日に、何故かクルー達が私を勧誘し始めた。
「あ、リーシャー!」
この声はベポさんだ。
ベポさんは私に手を振りながら、私の前まできた。
「あ、あのね……リーシャはずっとこの船に乗っていたいなー、とか思わない?」
私はまたか、と苦笑いした。
「残念ながら、私は乗りません……」
私がそう言うと、ベポさんはそっか、と肩を落とした。
ベポさんが船に残ってほしいと思っている事は一目瞭然だった。
(ベポさんだけじゃない……)
実は朝からもう何人ものクルーから「ずっと乗る気はないか?」と同じような事を聞かれている。
(でも、なぜ?)
私はいきなりそんな事を聞いてくるクルー達に疑問を浮かべた。
「あ、シャチさん」
私は近くにいたシャチさんを呼び止めた。
「なんだ?」
「あの、どうして皆さんは私を船に置きたいのか知っていますか?」
私が尋ねると、シャチさんは照れながらも教えてくれた。
「ほら、えっと……、リーシャは俺らが酒で潰れた時に毛布を掛けてくれたりしたろ?その気遣いっつーか……まァ、一番の理由は俺が聞いた話しだけど、無人島で俺が遭難している間に、船で色々あった時にリーシャが士気を立て直したのが決定的だったみたいだぜ?」
「そうだったん、ですか……」
私はそんなふうに思われる人間ではないのにな。
シャチさんは話し終えると、仕事があると行ってしまった。
「気遣いか…」
シャチさんの背中を見ながら、私は複雑な思いで呟いた。
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