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ローは宴が開かれている間、一人甲板にいた。
別に騒ぐ事が嫌いという事ではないが、今日はなんとなく出る気分ではなかった為、一人で酒を煽っていた。
シャチの話を聞いて気になった点は置いといて、ローは気分がよい方である。
今日は風がほとんどなく船はゆらゆらと静かに浮いていた。
(今日は満月か)
俺はぼんやりと月を見ていると、こつこつと後ろから足音がゆっくり聞こえてきた。
「今日は満月ですね」
俺は後ろを振り向くと、リーシャが微笑みながら空にある月を見ていた。
「そうだな……」
俺は前を向きながら答えた。
するとリーシャは俺の隣にやって来て同じように海を眺める。
俺はちらりとリーシャの横顔を見ると、口を開いた。
「一人旅をしていると言っていたが、いつからだ?」
俺が尋ねると、リーシャは海から目を離さないまま答えた。
「そうですね……12歳の頃でしたかね」
俺は密かに目を見開く。
俺の反応にどう思ったのか、リーシャは薄く笑った。
「確かに幼かったですね、旅をするには」
彼女はそう懐かしそうに目を細めた。
「私が一人旅をする前は一人の姉と一緒に暮らしていました」
「故郷へ残して来たのか?」
彼女は俺の言葉に首を振った。
「亡くなりました」
彼女は薄く笑った表情を変えなかった。
俺はリーシャの事を知らないのだから当たり前だが、彼女にそんな過去があった事に少しからず驚いた。
そう思っているとリーシャは困った顔をしながらすいません、と謝る。
「いや、俺も悪かったな……、構わねェならその話を聞いていいか?」
俺はなぜだかその時聞かなくては行けないと、海賊のカンというのだろうか、そう感じた。
「かまいませんよ」
彼女はにこりと笑った。
その笑みに俺は密かな違和感を覚えた)
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