03
すると、扉が開いたことにびっくりしたのか白熊が勢いよくこっちへ向く。
「あの……どうして中に入らないんですか?」
白熊にそう言うと相手は目を見開いて困惑の色を浮かばせた。
「え、えっと……お金持ってないし……それに俺、白熊だし……」
「?……とりあえず、そのままだと風邪を引いてしまうので中に入りましょう、ね?」
ニコッと笑って彼の手を引いて店の中に入る。
彼は困惑しながらキョロキョロと周りを見ていると店の主人がタオルを持ってきてくれた。
「あ、ありがとう」
白熊はそう言うと頭や体を拭いた。
「彼にもココアをお願いします」
私がそう言うと主人は「わかりました」と言った。
「えっ!そ、そんな悪いよ!」
白熊はそう言ってあたふたしながら焦っていたがそんな姿を見てかわいいな、と思った。
「まぁまぁ……そう言わずに、この店のココアはとても美味しいですから、ぜひ飲んで欲しいと思って勝手に私がしたことです。お気になさらないで下さい」
そう口にすると白い彼は諦めたようで、「ありがとう」と照れたように笑う。
「オレはベポって言うんだ」
白熊―――もとい、ベポは自己紹介をしてくれたので自分も名乗る。
「私はメイス・リーシャです。よろしくお願いしますベポさん」
そしてらお互い笑い合った。
「アイアイ、リーシャね!」
自己紹介が終わったところで主人がココアと美味しそうなシフォンケーキを持ってきてくれた。
「試作品なので、よければ食べていただきたいのですが……」
これは主人の優しい嘘だとわかったからとても嬉しくて頷く。
「ありがとうございます」
「わぁ!美味しそうだね!」
キラキラとした目で言うベポにクスッと笑う。
そうして彼といろんな話をし、気が付くと雨は止んでいた。
「雨が止みましたね」
「うん。そろそろ船に戻らないとキャプテン達が心配する」
ベポの話を聞いてる内に海賊だということを知り始めは驚いたが、リーシャは旅をしている中で良い海賊や悪い海賊を見てきているから彼のような海賊がいても不思議ではないということを知っていた。
「では、今日はお開きですね」
「うん。今日は本当に色々ありがとう」
「いえ、私もベポさんの話が聞けて嬉しかったです」
ベポがまた会いたいと言ってきたので二日後の昼に会うことになった。
「それではまた」
「二日後にね!」
そうしてリーシャ達は別れた。
***
ベポが船に戻る頃には空はオレンジ色になっていた。
「あっ!ベポ、勝手に居なくなるなよなァ!」
シャチがベポに駆け寄って来た。
「ごめんね、へへっ……」
「なんだ、上機嫌じゃないか?」
そう言いながらペンギンもやって来た。
「あのね「その前に飯の時間だから早く行こうぜ!」……」
シャチに話を遮られたが、とりあえずローにも早く話したいと思いベポ達は食堂へ行くことにした。
食堂へ着くと他のクルー達から大丈夫だったかと聞かれてベポはニコニコしながら大丈夫だよ、と返事をする。
テーブルに着くと食堂の扉が開いてローが入ってきた。
「キャプテン、ただいま!」
「あァ、次ははぐれるな」
素っ気ない言い方だがローはベポのことを内心心配していてベポはそれをわかっていたので気にせずに「アイアイ!」と言う。
「そういえば、さっき言おうとしていた事は何だったんだ?」
ペンギンが思いだしたように言うとベポはニコニコしながら今日あった出来事を話す。
ローは嬉しそうに話すベポを見ていたらこっちまで口元が緩みそうになってしまいそうだと思った。
どれくらい楽しかったのか伝わってくる。
シャチとペンギンも楽しそうに笑っていてベポの話が終わるとシャチが口を開いた。
「へぇ〜!そんなことがあったんだな」
「うん!それでね、また二日後に会うことになったんだ」
「よかったな」
ペンギンはフッと笑う。
「うん、キャプテン言ってきてもいい?」
ベポが喋っている間に口を開かなかったローは口元を上げながら構わないと言った。
(さぁ、物語の始まりだ)
[ back ] bkm