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俺はペンギン達にそこまで話すと、ベポが質問してきた。
「そのオオカミはシャチを攻撃してきたの?」
「それが何もしてこなかったんだよな……」
俺がそう言うとベポはえぇ!?と驚きの声を上げた。
これが本当なんだよな……。
俺は3人を見ながら話を続ける。
そんで、俺はそのオオカミを見て正直気が抜けた。
しかし、相手は一匹でも肉食。だから、気を取り直して俺は警戒した。
すると、オオカミはそんな俺を見ながら口にくわえていた物をころんと俺の前まで転がした。
「……なんだこれ?」
俺はオオカミを警戒しながらそれを手に取った。
「これ、食い物か……?」
いや、もしかして毒が入ってるかもしれねェ……。そう思い、俺はまたオオカミに目を向けた。
それに対して、オオカミは近からず遠からずの距離をとりながらその場所に伏せた。
そしてオオカミは俺に寄越したものと同じやつを食べ始める。
それを見て、これには毒が入っていない事を知った俺は、警戒を解かないまま岩に座り直した。
「……食えってか?」
俺がそう問い掛けると、そいつはちらりとこっちを見てまた食べ始めた。
「なんなんだ一体……」
俺は呟きながら寄越された物を見る。
喉が渇いているし、腹も減ってきた俺は意を決してそれにかじりついた。
「……甘ェ、果物か?」
まるでメロンのような味だった。
食べ終わった後も、俺とオオカミはじっと座ったままだった。
そうしてしばらくその状態が続いた後、突然オオカミが立ち上がった。
俺は咄嗟にナイフを出した。けれど、オオカミはそんな俺に背を向けて歩き出す。数歩歩くとオオカミは俺を見て顎でついて来いと示した。
「………」
俺はどうしようか迷ったがどの道此処にいても助からないと思った俺は、仕方なくオオカミの後に続いた。
しばらく、俺はオオカミの後を追っている内に、ある事に気がついた。
(さっきから肉食獣が襲って来ねェ……)
俺は驚きながらも、ずっとオオカミについていく。そうして数分歩き続けていると耳に波の音が聞こえてきた。
「……まじかよ!」
俺はその時、自分は助かったんだと感じた。
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