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- ナノ -
 
36


俺は自室に戻ると、医学書を手にベッドへ腰掛ける。
だが、内容が全く入ってこなかった。


「……チッ」


集中できなく、俺は医学書を閉じて机に置いた。



――コンコン


「誰だ」


扉を叩く音さえも煩わしく感じ俺は不機嫌な声で返事をした。


「私です」


俺はリーシャだと思わなかった為、思わず扉の方へ顔を向けた。


「……入れ」

「失礼します」


リーシャが扉を開けるのを見ていると俺は彼女の手にある二つのコップが目についた。


「コーヒーはいかがですか?」


リーシャは微笑みながら俺の前にコップを差し出した。


「……貰おう」


本当はそんな気分ではなかったのだが、得にやる事がなかったから受け取る。
ちらっとリーシャのもう片方のコップを見ると密かにココア特有の甘い香りがした。


「隣、いいですか…?」

「……あァ」


俺が二つ返事をするとリーシャは自然な動作でベッドへ座る。
そうしてしばらくは俺達のコップをすする音が部屋に響いた。


「………」


俺はふと、彼女はどうして此処へきたのか疑問に思った。


(あァ……そうか)

「失望、したか?」

「……え?」


俺は彼女がこの部屋にきた理由をぼんやりと考えていると、いつの間にか声に出していた。


「ベポにあんな事を言ってシャチの事も」


もう自分でも、自嘲の笑みが漏れる。


(だが)


俺達は海賊だ。
何があっても前に進まなきゃいけねェ。
俺が先を行かなければ、他のクルー達が命を懸けて海の最果てへと行けないんだ。


「たとえ、仲間を失ってでもな……」


俺はぽつりと呟きただコップの中に写る自分を見た。


「でも、貴方は苦しんでいますね」

「俺が、か?」


俺はリーシャの言葉に顔を上げた。


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