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最初で最後のバレンタイン


トラファルガー・ロー。

それが私の好きな人の、幼なじみの名前。
ずっと昔から好きだった。でも、いわゆる犬猿の中というには私が一方的に吠えているけれど、まぁそんな感じで今更「好きです」なんて言えない。

「ロー。鼻血出す気?」

「なわけねェだろ」

朝、教室に来て馬鹿な発言をするこいつは、俗にいう幼なじみだ。
俺だってこんな大量のチョコなんていらねェんだよ。
毎年毎年やってくるバレンタインに減るどころか、増えるチョコにローはイライラが募る。
そう思うと同時に俺はふと、目の前にいる幼なじみからは一度もチョコを貰ったことがないと思い出す。
「なァ」
「んー?」
んー、じゃねェよ。
「お前からのチョコはねェのか」
「え……」
今しがた鞄を探っていたこいつの手が止まり、俺を不審な目で見る。
だが、次には目をキョロキョロとさ迷わせ始めた。
その挙動不審な行動の幼なじみにローはほぅ、と笑みを浮かべる。
「あるんだな?」
ピクリ。こいつの肩が密かに揺れるのをローは見逃さなかった。

「欲しい」
「な、なにを?」
「チョコだ、チョコ」
「そんなの、他の女の子達からたくさんもらって――」
「お前からのが欲しいんだよ」

言葉を覆って言う俺に目を見開く幼なじみ。

「あ、え……?」
「くれよ」

最後と言わんばかりにニヤリ笑み付きでこいつの手を握る。

「は、はい」

するとほうけたようにリボンでラッピングされたチョコが入っているだろう箱を渡してくる。

「フフ、お前から貰うのは始めてだな」
「う、うん」

真っ赤に染まっている頬で頷く幼なじみの顔を見た俺は、

「これからはお前しかチョコは受付けねェ。だからお前も俺だけの為にチョコを作れよ?」

熟れた果物のように赤くなった耳元に唇を寄せて秘密ごとのように囁いた。






最初で最後のバレンタイン


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