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「#幼馴染」のBL小説を読む
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前編


ニュース・クーというのを知っているだろうか。
彼等はペリカンという生物であり知能がとても高い。
新聞を海から海へと運ぶ配達員として日々活躍している。
そして、その裏側でも毎日懸命に事件や取材を行う人間達も存在していて、その職業を記者と呼ぶ。
海軍と繋がっている時もあれば、単独で動く時もある。




――――




「なァなァ、餌付けとか出来んのかな」

「どうだろうな。調教されてるみたいだから難しいと思うぞ」

「うーん。おしっ、魚用意しとくか」

甲板でのんびりとした会話をしているのはシャチとペンギン。
先程から話題にしているのは新聞を届けにくるニュース・クーの事だ。
もうすぐ配達の時間ということでシャチがバケツに魚を入れて待つ。
数分も経たぬうちに黒い陰が空を羽ばたいてやってきた。
「クーッ」と鳴いて配達の知らせを伝えてくる。
船に降りたったニュース・クーは手をひらりと出して、先払いを要求してきて後から新聞を渡す。

「はいはい。んで、魚……は?」

「クーッ!」

ペリカン本能なのか魚を丸呑みしてシャチの目線には目もくれない。
モゾッと動いたニュース・クーの後ろにいる人影に二人は身構える。

「ひっ。ご、ごめんなさい!何もするつもりは、ありませんからっ。その、私っ。記者で、それで!」

「記者?」

ニュース・クーが人間を乗せているのを見るのは初めての二人。
相手は女らしく、おどおどとしていて驚いた。
はい、と頷いた女はハンチングの帽子を被り短パンの姿で、まるで男の服装。

「すいませんっ。こ、殺さないで……ただ、その……あれ?か、海賊旗」

唖然と頭上を見上げ、ハートの海賊団の旗を見つめる女は徐々に顔が蒼白になる。

「せ、先輩っ!海賊ですよ、この、ふ、船!早く逃げないと!痛っ」

先輩とはニュース・クーのことらしく、逃げ腰の女にペリカンは羽を丸めて彼女の頭を叩いた。
クァ!と怒った様に鳴いた先輩に後輩は涙目で「ごめんなさい。商売には度胸でしたね……」と震えながら呟く。
頭を摩る女はシャチとペンギンに再び目をやり縮こまる。
騒がしくしてすいませんと謝られ「いえ……」としか言えない。

「あ、えっと……あの旗のマークは、確か−−ハート海賊団?」

「ハート“の”海賊団だ。惜しいな」

「あっ、船長!」

「ええ!せせせせせせんちょー!?」

甲板に気配なく現れたのはロー。
突然の男の登場でリーシャはパニックになる。

「せせ先輩!やっぱり、やっぱり逃げましょう!痛い!」

二度目の羽の鉄槌を落とされたリーシャはついに震えてニュース・クーに泣き付く。

「先輩が逃げないならっ、私だけでも逃げますぅ!」

「おいおい!止めとけっ」

すぐにでも海に飛び込むつもりだったのに二人の男性に宥められる。
ペンギンという帽子を被った人がお茶を出すと、怖ず怖ずと受け取り飲んだ。

「先輩っ。一人で、一人で帰らないでくださいよ!」

ニュース・クーに置いていかれると路頭に迷う事になる。
改めて甲板に居る三人の男達に向き直ると、フカフカな帽子を被り目に隈がある男と目が合う。

「あ、貴方は……確か、裏アンケートで上位の」

裏アンケートとは海軍に秘密で行うアンケートの事だ。
海軍の目があると聞けない事はたくさんある。
その内容は毎回様々だが、色男アンケートという一風変わった事を街頭インタビューで会計した。
結果は大体予想していた通りだったが、ルーキーが入ってきて先輩記者達が驚いていたのを覚えている。

「だ」

「「だ?」」

「あ、やっ、やっぱり言えません……」

「中途半端!最後まで言ってくれよっ」

シャチがつっこむとリーシャは顔を赤くして挙動不審になる。

「つ、つまり……………………そういう、ことをされたい……ってアンケートに……書いて、ましたっ」

「そういうこと?」

「ああ……成る程な」

ペンギンが首を傾げる中、ローはピンときたようだ。
何とか伝わった内容に安堵していると、今度はリーシャにニヤリと彼は笑いかけてきた。

「それにしても、お前初心だな」

「え……」

カァ、と顔が熱くなる。
見破られたことも恥ずかしかったが指摘されるなど、穴があったら入りたい気持ちになる。
やはり海に飛び込もうと立ち上がった。
またもや止められ未遂に終わったが。
ニヤニヤとした顔をこちらに向けてくるローに顔を合わせられず俯く。

「くくっ。へェ?男慣れしてねェのか?」

「ううっ」

弄りがいのある反応に男は口を再び開く。

「俺が教えてやろうか?」

「う、うえええん!せんぱーい!」

先輩ペリカンに向かっていくリーシャにローは肩を揺らして笑った。


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