04
「はぁー、久々の休暇ね」
ぐっと手を伸ばし背中を逸らせばそれはランのリラックスの合図。
海軍の制服で正義を背負っているランは今、私服に身を包んだただの女性である。
オフの日くらい生き抜きをしなければ、ほぼ男社会である海軍ではやってられないからこうして有意義な時間を過ごすのだ。
「………げ」
少し遠くにチラリと‘赤’が見え、ランはそっと近くにあった本屋へ入り身を潜める。
今か今かと通り過ぎるのを見ていればかのユースタス・キッドは周りに避けられ真ん中には綺麗に俺様ロードができていた。
「見事に恐がられてるわね」
「あんな顔だからな」
「確かに……ん?」
ランは一体誰と会話しているのかと疑問に思い横を向くと、そこには買物袋を抱えた‘殺戮武人’キラーが佇んでいたので声にならない悲鳴を上げる。
「!!………なんでいるの!?」
「いや、たまたまお前の後ろ姿が見えたからな」
「そ、そう………」
なんだか殺気を全く感じない会話にランは少しずつ肩の力が抜けていくのを感じ、ため息をつく。
「殺戮武人も買物袋持つのね」
「これが俺の仕事だ」
「二番手なのに?」
「そんなものだ」
ランも休暇中に仕事とか争いは避けたいが為温厚に対話する。
「キッドがそんなに苦手か?」
「海兵に海賊が好きなんて人滅多にいないと思うけど?ましてやユースタス・キッドはね」
「違いない」
仮面で素顔や表情は見えないが微かに笑っているような気がした。
「キラーじゃねェか」
「キッド」
突然の声と殺戮武人の言葉にランはピクリと肩を上げる。
先程も言ったが休暇中に厄介事は避けたいからランはバレないように前を向く。
「なんだその女」
「道を聞いたんだ。すまなかったな」
「………」
殺戮武人はランの心情を察してか、他人のフリをして逃がそうとしてくれているのだと気づき、首を慌てて縦に振りそそくさと顔を見られないように歩き出した。
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