03
「てめェ……」
ランが歩き出した時、怒りを含んだ声が聞こえた。
「え、あっ!」
カチャカチャ、と金属音が肩から聞こえグッと見えない力に男の身体が宙に浮く。
「うわァァ!?」
「ユ、ユースタス・キッド!やめなさいっ!」
先程痛めつけたというのに何故かまた男を捕まえようとする。
慌てて男の服を掴むが、ランも一緒に引きずられた。
「もう一回言ってみろ」
男の襟首を掴み凶悪な表情を浮かべるユースタス・キッドにランは必死に引き離そうと試みる。
「や、やめなさい!」
しかし全く効果はない。
どうしようかと悩んでいるとランの耳に援軍である海兵達が駆け付ける音が。
「良かった……」
なんとかこの場を切り抜けようとまだ男を睨みつけているユースタス・キッドを見る。
「その人は民間人よ。離しなさい」
真っ直ぐユースタス・キッドの目を見る。
「……チッ」
舌打ちと共に男を投げつけてきたキッド。
「わっ……!」
どうやら分かってくれたようだ。
ランが男を病院へ運ぶようにと海兵に頼んでいる間、ユースタス・キッドとキラーは既に向こうへと姿が小さくなっていた。
追わない理由は相手が億越えの賞金首だからだ。
ランは人物の力量を理解している。
その分、相手を間違えばただでは済まないと感じ、じっと彼等が次の島へ行ってしまうのを待つしかない。
なんと言われようが、ランは正義を真っ当するが何より命を優先する。
民間人を守るのも、部下である海兵達を守るのも全てランの役目だからだ。
(命より勝るものなどありはしない)
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