02
ランが駐屯所を出てしばらく歩くと周りに人だかりが出来ていた。
「なにかあったのかしら?」
ランは海軍の勤めとしてその人だかりの中心に向かう。
「通してください。海軍です」
その言葉と同時に野次馬がいそいそと道を開ける。
そして中心にある光景を目にした瞬間――。
「……げっ」
「あん?」
ランの視界に真っ赤な髪が目を引くルーキーの中でも最高額であるユースタス・キッドがいた。
まだそれだけならよかった。
「お前ェ……、奇遇だなァ」
ユースタス・キッドは、ボロボロになっている男を自分の手から無造作に放り投げながら口元に笑みを浮かべる。
「……黙りなさい。そこに倒れている人は民間人ね。ユースタス・キッド、また被害を出したわね」
ランはキッドを睨みつけ、剣を鞘から引き抜く。
その様子をキッドはおもしろそうに見ていた。
「笑っていられるのも今の内ね」
キッドの態度にイラッとしたが、相手に悟らないようにもこちらも笑みを見せつけた。
「ハッ、面白れェ……」
先ほどまでいた野次馬達は、キッドとランのピリピリした空気に威圧感されいつの間にか、いなくなっていた。
「キッド」
「キラー、いいところに来やがって」
陰険な雰囲気に入ってきた人物。
キッド海賊団に所属している、キッド同様の高額な懸賞金を首に掛けられ、『殺戮武人』と呼ばれているキラー。
「いつもお前はどこかへ行っても見つけやすいからな」
「……ぷ」
キラーの言葉に吹き出すラン。
殺戮武人もなかなかのセンスをお持ちのようで。
ランの様子にキッドは「笑ってんじゃねェよ!」と怒鳴る。
「説得力ないから」
ランは剣を鞘にしまい、怪我をしている民間人を担ぎ上げる。
「大丈夫ですか?今すぐ病院へ連れて行きますから安心してくださいね」
ランは安心させるように呼びかける。
が――。
「お、女の海兵なんかに助けられても迷惑なんだ、よ……!」
血だらけの男はゼェゼェと息をしながら少し身をよじる。
こんな時になにを贅沢なことを言っているのか。
ランは呆れながらも歩き出した。
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