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「フン。逃げ切れると思ってんのか」
「はぁ?そもそも私を誘拐するのは何故?」
逃走したはいいが、誘拐犯の意図が全く読めなくて額のシワが深くなる。
何故ここまでランに執着するのかわからなかった。
「……海軍を攫ったら俺の懸賞金が上がる」
「私を攫ってもたかが知れてるわよ……呆れた」
そう口にするとキッドはまるで鬼の様な顔になる。
「うるせェ……てめェのせいで服が濡れた」
「自業自得ね、ふん!」
腕を組んでツンと顔を背ければ背後にいたキラーがキッドに問い掛けた。
「そいつは海水に浸かったんだ。風呂に入れてやったらどうだ」
「はぁああ!?入るわけないでしょ!敵の懐なんかで!」
ランは信じられないと怒鳴った。
しかし、キッドの表情は違い考え混んでいる。
「それもそうだな」
「うっさいユースタス!」
反論を述べるランに構わずキッドは風呂に捩込んだ。
「着替えは用意してる。早く入れ」
「命令しないでカス」
「んだと」
カス呼ばわりに額をヒクつかせるキッドを無視してランはプイッと横に向いた。
「今から……入るわけないわよ!」
――ドスドス!
「っぶねーな!」
ランが投げ付けたのは石で出来たナイフ。
数本壁に突き刺さるのを見て舌打ちする。
「避けないでよチューリップ。そして私は諦めないから」
最後の言葉を残してランはユースタス・キッドが立つ前の扉を閉めた。
成り行き?いいえ、宣戦布告よ
END
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