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海軍総出で海賊を討伐しに来たのに、思わぬ横槍が入った。
「なんだ?俺達がアイツらを潰したからお前らの面目が丸つぶれになったって焦ってんのか」
「面目とかいう問題じゃないわ」
どう対応すればいいものか。
海兵達の手前、やはりここは――。
「退却するわよ。デイブリッド海賊団を縛り上げて」
「は……はっ!」
唖然としていた海兵達がキッド達を気にしながら作業に取りかかる。
会議でキッド海賊団には下手に手を出さないように指示していて良かったと安堵した。
もし、一言も注意を促さなかったら海兵の誰かが三億もの首に襲い掛かっていたかもしれない。
「身体を動かすには全く意味のない相手だったな」
キラーが何ともないという風にキッドに語りかける。
「本当だぜ。もう少しぐらい骨のある奴がいるかと思ったのによォ」
キッドは口元に凶悪な笑みを浮かべて喉で笑う。
一体どれ程強かったら、この男を打ち負かせるのだろうか。
そんな無謀な事をぼんやりと思った。
「……疲れた」
無意識に呟くと一気に緊張が緩くなった。
(リーシャ、今貴女に凄く会いたいわ……)
忙しかった下準備も海賊討伐も無事に済んだからか、途端に胸に失意感が漂う。
本当に長い休みをもらった方が身のためだと感じた。
ふと横を向くと既にキッドとキラーの姿はどこにも見当たらない。
(結局、運動の為に暴れたのね)
飽きれ半分諦め半分。
どっちにしろ彼らには借りを作ってしまったのだろう。
ランは深く呼吸をすると再び海兵達に指示を飛ばした。
海賊に尾縄を頂戴したランは次の日から長期休暇を取った。
身体を休ませなければと感じる程疲労が溜まっていたのだ。
丁度良い機会だと親友の元へ行こうと荷物を詰めた。
のに――。
「どういう事よ!」
ダン!と食卓とは程遠い造りのテーブルを叩く。
「なんで、あんたがい・る・の・よっ!」
「ダンダン叩くな。壊れるだろうが」
「あんたのテーブルなんて壊れればいいわ!」
「いいわけねェよ!」
間入れずにツッコんで来たのはユースタス・キッド。
何故キッドがここに居るのか。
それは至って簡単だ。
現在ランが居る場所はキッド海賊団の本山、海賊船の中である。
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