「お前、俺の船に乗れ」
真っ赤な髪をした、まさに悪魔のような笑みを見せた男がいた。
「………お断り」
だが、そんな男の言葉を一人の海軍軍曹は笑顔で一刀両断した。
***
「疲れた〜……」
海軍軍曹であるランは肩をならしながら椅子にストンと座った。
「お疲れ様です、ラン軍曹」
「ん、ありがとう」
海兵がランにお茶を渡してきたので受け取る。
「例の……ユースタス・“キャプテン”キッドに怪しい動きはあった?」
「いいえ、ありませんでした」
返ってきた報告にランは「そう」と答えるとため息をつく。
実は先日、新聞を騒がせているルーキーの中で最高の懸賞金額をその首に掛けられているユースタス・キッドが、ランのいるこの島へ上陸してきたのだ。
しかも、問題は他にもある。
「ちょっと休憩してくるわ」
「お気をつけて」
「ええ……」
(気をつけられるかしら……)
ランは苦笑いしながら駐屯所を後にした。
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