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16


ランの言葉に部下達は仕草で了解を伝える。
忍び寄るようにバラバラに別れた。
ランも数人を引き連れ海賊船を囲む。
戦闘の準備は完了した。



(後は合図を送れば……)



ランは覚悟を決め、バッと手を挙げる。
すると、一斉に海兵達は足音を殺して海賊船へと入っていく。



「敵襲だァ!!」



敵の見張りが叫んだ。
それからあっという間に乱戦。
海兵側は大砲を打ち、海賊側も大砲を打つ。
互いに刃の金属音が鳴り響く。



「“穴蔵のグリップ”!」



ランは、手配書に載っていた船長に切り掛かる。



「なんだァ?女じゃねェか」

「貴方達を討伐します」



あくまでも冷静に。
ランは卑下されても平常心を保った。
一瞬の隙は命取りなのだ。
男――グリップは、ランを見るなりニヤニヤと不吉な笑みを見せる。



「こりゃあ、とんだ上玉だなァ!どうだ、俺の女にならねェか?」

「断るわ」



一刀両断した。
しれっと何食わぬ顔で言い返せば相手は更に笑みを深くする。



「いいねェ。気の強ェ女は大好きだ」



不愉快極まりないが、ランは感情を出さずに刀を振り下ろす。



「女ァ……俺ァ穴蔵だぜ?忘れちゃいけねェ」



男が何を言っているのかと思った瞬間、足元から何が飛び出してきた。



「な!」



ギリギリで避けたが服が薄く裂けた。



(何、今のっ!?)



ランは信じられないと裂かれた服を見る。



「今のはなァ、地面に埋めると破裂する種なんだぜェ。殺傷力が良すぎて重宝してんだよなァ」



愉快犯のように笑う男に背筋が凍る。
予想外の出来事だ。
相手にこんな隠し玉があったなんて。



「助かりたきゃあ選択肢をやるぜ」

「……なんですって?」



ランは初めて顔を歪めた。
命ごいをしろとでもいうのか。



「綺麗な顔が台なしだせェ?俺の女になるってんなら、助けてやるよォ」



狂ってる。
ランは自分を欲しがる男にそう感じた。
助かる為に女になれ?
馬鹿にするのも大概にしてほしい。
ランが皮肉めいた言葉を吐こうとした時だった。
その獣のような唸り声を聞いたのは。



「てめェみてェな弱者に、その女は扱えねェよ」



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