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15


余程穴が空くほど見詰めていたからか、キッドから舌打ちが聞こえた。



「興が覚めた。俺は帰る。お前もとっとと行きやがれ」



しっしっ、と犬を追い返すように手を掃うキッド。
ランは、ほうけている自分に気付き「そうね」と頷く。
スタスタと既にランに背を向けて歩き始めていた赤い悪魔のような彼にふと、何かを言わねばと感じた。



「助かったわ。ユースタス・キッド!」



ランが軽く声を上げるとキッドは弾かれたように振り返り、その真っ赤な瞳はこれでもかという程見開いていた。
しかし、すぐにニヤリと自信に溢れた笑みを浮かべる。



(相変わらず、悪い笑みね……)



内心、微苦笑を浮かべたくなった。
もっと感じよくすればそれなりに顔はいいと思われる。
ランは近所の町の同い年の女性達の会話を思い出す。



『凶悪だけれど、あの雰囲気がまたいいのよね』

『筋肉とか凄そう』



などなど、お酒の勢いもあって女達は好き好きに言っていた。
ランは海賊なのにと反感しか覚えなかったが。
女達には、その反応が納得いかなかったようだったけれど。
キッドの別れてこっそりと駐屯所に戻る。
親友の件で直談判する予定がすっかり道草を食ってしまった。
ランはため息をついて内心がっかりする。



「私の死活問題なのに、このままではダメね」



次こそは!と意気込むランだった。













翌日は――デイブリッド海賊団の討伐決行日。
ラン達、海軍は朝から慎重に動いた。
予定を立てていた時から戦闘の準備は黙々としていたので準備万端である。
兵も十分過ぎる程集めた。
これで討伐をできる、とランは気を引き締めた。



「討伐を開始する」



海兵を率いるカリスマ性がランには確かに備わっていた。
海兵達はそれを感じ取っているのか、女だと馬鹿にする者はいない。
素直にランの指示に従う。
的確で頭脳を使う戦法に周りは舌を巻く。
場慣れしていることも含め、海兵達の士気は確実に高まっていた。



「あそこね」

「はい、あの船に船長および船員がいます」



海兵の一人が報告にきた。
ラン達は、デイブリッド海賊団の船が停泊している岩影に身を潜めていた。



「各自作戦通りに動いて」



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