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なかなかしつこい上に、口調がとても悪い人だと悪態をつく。



「だから、私は忙しいんです。違う人を今呼ぶので」

「チッ」



舌打ちが聞こえて腕を掴まれる。
が、相手が危害を加えようとしていると察知したランは誰かの腕を逆に捻った。



「な!」



はずだったが相手は力強いらしく、ぴくとも動かない。
ランは驚きに相手を見る。



「て、ユースタス・キッド!?」

「気付くの遅ェよ」



唖然とするランに呆れ顔のキッド。
異様な二人は目立つ。
民間人が何事かと恐怖と好奇心に気色ばむ。



(まずいわ、このままだと……!)



ランがキッドとやり合うと思われるのは困る。
相手が攻撃してきたわけでもないのに、手を出しずらい。
ここは普通「海賊!」と一発触発になるべきなのだろうが、生憎今の自分がそんな事をしてもメリットがないだろう。
そう踏んだランはキッドの反応は如何なものか、と窺った。



「チッ……面倒臭ェな」

「……はぁっ!?」



キッドは厄介者達を睨みつけ、なんとランを肩に担いだ。
いきなりの行動に驚きが隠せない。



「何するの!はっ、離しなさい!」

「煩ェ。騒ぐな」

「貴方理不尽にも程があるわよ!」

「理不尽?ハッ、海賊に言う言葉じゃねェな」

(こいつ……!)



何を考えた結果、ランを担いだのかわからない。
そんな状態のまま、二人は人気のない路地を進み港へと着いた。



「路地で襲われるかと思ったじゃない」

「……そこまで落ち潰れてねェよ」



港に着くとランはキッドの肩から降ろされた。
内心、ホッと行きをつく。



「それよりも、どうして私をここに連れて来たの?」

「理由なんて、ねェ」

「そのわりには歯切れが悪いようだけど」

「んだよ。助けてやっただけだろうが……」

「そうなの……え?」



勢いで納得しかけたランは己の耳を疑う。
彼は今、何と言った?



(助けて、やった……?)



極悪非道で傍若無人な、あのユースタス・キャプテン・キッドが自分を助けた?
信じられない心境のままランがキッドをまじまじと見る。
居心地が悪いといった表情を面に出す彼と目が合う。
どうやら今の言葉の発信源は、この真っ赤な男で間違いないようだ。



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