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「ですが……」
まだ、何か言いたげな部下にランは厳しい口調で答える。
「戦いというのは、常に命懸けです。貴方の考え一つで、この場にいる全員の命が失われることもあるでしょう。そんな時、貴方は全てを守る事ができますか?」
「……軽率でした。すいませんでした……」
若い海兵は、しゅんと萎んだ花のように肩を落とした。
ランは、落ち込んでしまった海兵にニコリと笑う。
「いいえ。貴方の考え方も一理あります。ぜひ、これからも意見があればお願いしますね」
「!……は、はいっ。了解しました!」
海兵は肩を震わせて感動と喜びに敬礼をした。
それにランは頷くと再び海兵達を見る。
「他に質問のある方は?」
誰も意見を言うものはいなかった。
当然だろう、この場所にいる男達の大半はランを慕っているのだから。
「では、明日の夕刻に作戦を実行します」
「はっ!!」
海兵全員がランに了解との敬礼をした。
「ふー……私に長期休暇をくれないかしら……」
デブリッド海賊団討伐作戦決行の前日。
ランは長いため息をつきながら物思いに浸った。
理由は、単純な事。
ランの大親友であり弱愛するリーシャの事だ。
長い間、彼女とは会っていない。
唯一の繋がりと言えば、電話を毎日欠かさずにしている事だろうか。
足りない、足りないのだ。
ランのリーシャ不足が深刻化している。
「というか、どうして私とリーシャを離れ離れにするのかしら。同じ場所に配属にしてくれたっていいじゃない。私が何をしたの?むしろ名誉な功績しか残してないわよ。あ、そうだわ。それを人質にリーシャをこっちに移動させるように本部に掛け合わせましょう。いいアイデアね。そうと決まれば「おい」」
海軍本部に連絡をしようとダッシュしかけるラン。
もちろん、そんなタイミング悪く声をかける不届きものに機嫌が悪くなる。
「誰よ。私に今話し掛けないで下さい。悪いけれど、他を当たってくれますか?」
「他の奴に当たってもそいつは腰を抜かすのがオチだぜ?」
「そんな弱い精神の海兵はうちにはいません」
「お前、いい加減にこっち向けよ。話になんねェ」
「今忙しいんです」
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