09
どんどん加速する喧嘩。
外野のクルー達は自分達の船長と海兵であるランの扱いに迷っていた。
「そこまでにしろ。キリがないし時間の無駄だ」
やんわりと子供の喧嘩の仲裁をするように声をあげたのはキラーであった。
その言い方に一番先に反応したのはラン。
「なんで私まで言われなきゃならないのよ!貴方が私に何か言う資格なんてないじゃない!」
もっともな意見にキラーは口を閉じた。
キッドはランの発言にまたもやまくし立てる。
「助けてやったのにてめェはそれしか言うことがねェのかよ!」
「私は一言も助けてなんて言ってないわよ!だいたい怪我をした原因は貴方達が町で暴れたからでしょ!」
「違いない」
「おいキラー!納得すんな!」
暴れたから海軍であるランはキッドを捕まえなくてはいけなかった。
暴れなければ何も起きない。
当たり前の常識を逸しているキッド達にランは怒りを感じた。
(だから海賊は嫌いなのよ!)
正当化なんていう言葉は通用しない荒くれ者。
海賊は悪。
それは偏見ではない真実。
けして海軍が完全なる正義とは言えないが、海賊によるグランドライン全体の被害は計り知れない。
「私は海賊なんかとじゃれあいたくないの」
「あ?」
本音が口をついて出る。
だが、ランが海兵である限りキッドが反論をしても無駄に思えた。
キラーも敢えて口を出さない。
お互いの関係を理解しているからこそ、全員が何も言わないのだ。
ランの正義感は他の海兵よりも群を抜いて強い。
「出ていくわ。止めようとするなら容赦しない」
「……好きにしろ」
キッドの代わりにキラーが答えるとランは踵を返した。
それをジッと見つめる、微かな陰りを帯びた赤い瞳に気付かずに。
「さて、と……どう報告しようかしら……」
乱闘になった場所から忽然と姿を消したキッド海賊団とランを血眼になって海兵達が探しているだろう。
言い訳と口実をどう説明しようかと考えながら海軍の駐屯所に向かった。
やっと駐屯が見えてきた時、外にいた海兵の一人がランの姿を見つける。
「軍曹!――軍曹が帰ってきたぞっ!」
そして、駐屯の中に向かって帰還を仲間に伝えた。
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